モデルアート「日本陸軍機データベース」

1/72、1/48、1/32各スケールの日本陸軍機インジェクションキットの総合ガイドブックです。

「平成時代に登場したもの、または売られていた製品」と巻頭に記されている通り現行品を中心として市販キットの内容を紹介していくものです。近年はむかしほど店頭で直接中身を確認する行為が出来なくなっていますから、このような書籍が刊行されるのもいまどきの風潮ということかな?


とはいえ現行製品だけではなく、懐かしいアイテムや絶版キットも数多く紹介されています。むしろ見どころ読みどころはそっちの方にあるかも知れません(笑)紹介されている各キットは5段階で入手難易度を判定しているのですが(星5つが「非常に購入しやすい」〜星1つが「入手が困難」)、生産休止中で難易度がそもそも未記載なアイテムも散見されます。いわゆるカタログとはちょっと違った、文化財的な資料本としての側面が強いように見受けられます。


例えば現在でも航空機模型のなかで市場でも一定の割合を占めているハセガワの限定品、デカール替え製品はあまり掲載されていませんし、いわゆるコンボアイテムについてはまったく触れられていません。


そういう意味では完全に網羅しているとは言い難いのかもしれませんが、ハセガワの限定アイテムを全部把握してるひともあんまり居なさそうではある。


あらかじめそのあたりを踏まえておけば、近年急速にアイテム数を増し国内での入手も容易になっている東欧圏のキットを、パッケージイラストだけではなくランナーの状態やデカールの質まで含めた幅広い内容解説が成された本として、重宝される方も多かろうと思われます。キットの入手性に中古品やネットオークションでの流通が勘案されているのも現代の模型事情を反映したものでしょう。



完成品はモデルアート本誌に掲載された作品を中心にギャラリーとして掲載されています。製作ガイドとしての文章記述は短いものですが昨今あまり完成品を見ないキットも多く、美しいフォトは目にも優しいものですね。


輸入機は余禄のような扱いですが、ウイングナットウイングスの複葉機キットをはじめ数は少ないながらもユニークなアイテムが取り上げられています。日本仕様のJu-87は陸軍機よりも「提督」向きかも知れませんが(笑)


「次は何作る?」と表紙にキャッチコピーが記されながら、その後に続くのは「模型人生の思い出を彩った品々」というリード文で、実際に本書で紹介されているキットを作るのは結構大変なことじゃないかしら。いかにもモデルアートらしい懐古趣味への偏重が感じられるのは若干心配にもなりますが、本書を購入されるモデラー層なら既に全部積んでそうな気配もある。その辺もまた、モデルアートらしい本です。


極めて個人的にはその昔、スケールモデルの品揃えが強かった今は亡き某模型店の片隅の、かなり奥の薄暗いところにぶら下がっていたのを目撃したキ−115「剣」のキットに再会して、なんだか懐かしいような古傷をえぐられるような、とにかくいろいろ琴線に触れる。アヴィエーションUSKのこのキット、簡易インジェクションって言葉もろくに知らない子供には、いろんな意味でショッキングだったものですよええ……(遠い目)

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