タミヤ「1/35 スカウトカー ダイムラーマーク 2 」

ホビーショー発表のニューキットの話題がホットなタイミングではありますが、そんなときでも絶版キットの紹介です。メーカー的には「生産休止中」扱いですが絶版と言ってしまって差し支えないでしょうタミヤミリタリーミニチュアシリーズNo.18、ダイムラー偵察車。

手元の資料によれば初版発売は1972年10月とあります。発売以来42年ってうわ厄年ですよいろいろ大変ですよもー。さすがにいろいろ牧歌的なプラモデルで、近年はあまり見かけなくなりました。最後に生産されたのいつだったかなー?


1カットのみとはいえ「ガールズ&パンツァー」に登場しました車両ですから、店頭に残っていたものも概ね購入されていったようですね。たしかつい最近ホビージャパン誌にトキハマジロー氏の作例が載っていたと思いますがあれは何月号だったか……。ああ8月号でした、まだ在庫あります。ガルパン仕様に興味ある方はそちらも参照してみてください。


二人乗りの車両ですが、フィギュアは3体付属しています。車外にフィギュアをひとり立たせることでそこから周囲の空間を感じさせたり、実際にベースを作って情景を製作してみようと思わせたり、拡大志向というかいろいろ広がりを感じさせる製品構成はいいなあ。最近のキットの多くは精密製を高めた集中志向のような気がして、対照的に感じます。どちらが良いとか悪いとか、そういう話ではないのですけど。


デカールは第1師団をはじめ5種類、説明書では各種マーク類についても詳しく解説されています。とはいえ本キットのキモとなるのはボックスアートにもなっている第7機甲師団「砂漠のネズミ」のマーキングでありましょう。初期のMMにアフリカ戦線アイテムが多かったのはロンメル将軍など著名な人物やドラマティックな史実の影響はもちろんですが、何もない空間でも砂漠に見立てやすいという目論みはあったのではないかと。とりあえず砂色のプラモデルを作っておいておけば、畳の上でも公園の砂場でもそれなりに見栄えがしますし、ディオラマを作って写真に撮り、メーカー主催のコンテストに応募するのもそれほど高いハードルではなかっただろうと推察されます。本キットは小さなプラモデルですが、実に高度な戦略性が感じられます。そんなことよりみなさんチューブ入り接着剤に目が行き過ぎです(笑)


このブログをご覧になっている読者の皆さんには「このキットより俺のほうが若いぞ!」と驚かれる方が多いかも知れません。それをやるならIV号H型だろってツッコミいれるひとはたぶんみんな年寄りだ(笑)いや、前からこれ作りたかったんですよ。ガルパンよりずっと前からね。


初版は定価250円だったそうですが、この個体は300円の表記になってました。ちなみに現行価格は一応税抜きで800円ということになっております。ところで42年前の250円で他には何が買えたんだろう?ちょっと調べたらこしひかり10kgが2500円という数字が出来てました。その頃はまだ標準価格米の時代ですから高級ブランド米の意味合いも今とは異なりああ、むしろ封書が20円というのが丁度いいのか。いまは82円ですから概ね物価の変動に見合った価格上昇だといえるかなあ。
 

さすがにバリも出ていますしそもそもの設計が甘いところも見られます。現状なかなか再生産されないのも仕方がないことでしょう。今ならミニアートがいろいろバリエーション展開も豊富で新しいキットを出していますしね。


しかしいかにディティールが甘いとはいえタミヤの古いフィギュアはパリッとした格好良さに溢れていますな。旧IV号Hの車長やKV-2のガッツポーズ戦車兵、88ミリ砲の指差し将校などどれも大仰な、ちょっとマンガ的な見栄を張ったポーズが多い(新キット発売のおかげで旧ラングの低く身構えたフィギュアがまた話題になりましたね)のは時代性もありましょうが、「リアル」だけでは語れない魅力がやはりミリタリーモデルにはあるのでしょう。


プラモデルに限らず「大人の鑑賞にも耐える」という形容をよく聞きます。子供に向けて作られたものでありながら、子供だけでなく幅広い世代・長い時代に愛されるものによく冠せられる言葉です。例えば「ウルトラQ」とかね。でもちょっと考えてみると何かに対して「大人の鑑賞にも耐える」と讃えているひとたちは、大抵の場合は子供時代のインプレッションを持続させているのだよなーと、大事なのはそこなんですよやっぱりね。


では実際の製作に進んでいきます。少ないパーツながら操縦席が斜めになってる本車の特徴をよく掴んだインテリア。部隊に先行して偵察任務を行い、敵を見つけたらさっさとバックで逃げるためのすばらしい座席配置!本製品はダイムラー偵察車でも大量生産されたマーク2をキット化していますが、元々は4WDS機構を備えていたマーク1からのインテリア設計なんですなこれ。


ボディは左右を貼り合わせてから前面装甲板などを取り付ける流れです。オープントップで車内がよく見え、傾斜装甲で内部が塗装しづらい形状をしていますから組み立てながら塗っていくスタイルがいいのかな?如何に戦車モデラーとはいえ全部が全部「全て組み上げてから塗装する」でなくてもよかろうものかと。


さすがにパテが必要となる箇所もあります。タミヤ製品とはいえ仮組みは慎重に。


キットの素性をそのままに組んで行くのがいつもの方針なのですが、車体左右の雑具箱だけはあんまり簡素なつくりでそもそも雑具箱に見えない(w ものですから、プラ板貼って構造を示すようにしてみました。ホントはフタの厚みとか折り返しとか、金具部分のディティールとかいろいろあるのですけれど、元キットの簡素さに甘えるかたちで!甘えたいのが本音だ!!


あまり肩肘張るものでもないしなー。各部ディティールこそ甘めなものの、「キットの形状はとてもよく出来ており、公表された外寸値に対してきわめて正確である」と著名な英軍モデラー、フィル・グリーンウッド氏も述べています。AM2002年6月号の「ブラボー!・ブリティッシュ・タンクス」連載第33回の記事は日本語で書かれたダイムラー偵察車の解説としてはこれがベストではないだろうか。単行本化は望むべくもないでしょうが……


いろいろ装備品を取り付けていくとやっぱり気になる雑具箱のやっつけ具合である(笑)なーにいざとなったら荷物でも載せればいいのさ。ベルトリングラリーのレポートなどを見ると小さなスカウトカーに山ほど荷物を積載した車両を目にします。キャンプの楽しさはミリタリーモデルの楽しさにたぶん直結するもので、「牽引」とかテントとかまあ色々と。ノルマンディー70周年のおかげで英軍装備品も急に各社から出揃いましたから、英軍モデラーにとっては良い時代ですのう。「遠すぎた橋」特集とか、そういうのは最近流行らないのかも知れませんが。


シャーシーはシンプルながら四隅に屹立するコイルスプリングが頼もしい。四輪とも回転、前輪はステアしますのが仕様です。


パーツの拡大写真で見えたように前輪のサスペンション受け部分は少しズレて開口されているのですが、それでもボディとシャーシはぴったり結合されました。その辺は流石なもので「失敗しない」ってそれもまた大事なこと。ガンプラでさえ極初期の300円ガンダムやザクでは肩関節で泣きを見る子が多かったのですから……


一部パーツの建てつけが悪いのは、例によって木工ボンドで仮組みしている状態だからだったりする。あとキットにはハードトップ(?)のパーツも入ってるのですが「雨天時に使用する屋根で通常は取り付けていません」とありますから今回は使わず済ませる。実際マーク2ではキャンバストップが多用されたしマーク3にいたっては完全に屋根なしになったようなので気にせず行こう。しかしエンジン部分は後継のフェレット装甲車とまったくおなじライン取りなのですなあ。


特徴的な座席配置を見せたかったが車長シートが歪んでいてうまく角度の違いを提示できないぞうううむ。車内のディティールアップについては同じタミヤのブレンガンキャリアーから無線機持ってくるといいヨ!とはやはりフィルの談。同時代の同一メーカーの製品なので相性はいいんでしょうね。まあ全車標準装備ではなかったんで、積んでなくても全然オッケイだぞ!


イギリス兵士三人組。パッケージのイラストは砂漠の真ん中ではるか遠方を見遣る風情、空中戦の行方を見守るような情景が思い浮かびますが、単に道に迷ってるだけにも見えます(笑)先行きなどわからんものです。


ランナータグをネームプレートっぽく加工してみましたこのキット。1972年10月の生まれには昔からシンパシーを感じていて、いつかは紹介したかったアイテムなのです。タミヤの古いMMではもうひとつ取り上げたいキットがありましたが、それについての思いはすでにこのページに掲載されたのでよしとする。

ダイムラースカウトカー、シンプルな構成ながらいろいろ楽しいプラモデルでした。ジープ並みの小さな車格に装甲ボディのエッジはなかなかの格好良さで、偵察装甲車としては同じくMMにラインナップされてるドイツ軍のSdkfz222よりスマートな印象があります。魅力は確かに衰えず、とはいえキットの古さは否めません。より精密なものとしては前述ミニアートのキットが各形式を、ドイツやイタリア軍仕様まで含めてリリースしております。むろん簡単に組めるキット需要はありますが、それについてはホビーショーでヨンパチキットが発表されておりました。40年前の1/35ミリタリーミニチュアが持っていた役目を、本当はこのクラスの製品でバトンタッチするべきだったのかも知れませんね。現状、そこまでのレベルにはちょっと達していないだろうと、それはメーカーやモデラーを含めた社会全体が40年前とは違いますから仕方がないことではある。


でもやっぱり簡単に形にするならタミヤのヨンパチって良いシリーズです。オススメですよ1/48ディンゴ。ですからしてこの1/35キットにも、そろそろ「引退」の文字を背負わせても良いでしょう。


と、いうわけで気がつけば4年と9ヶ月も続いたこのブログ、諸般事情ございまして今回で一旦お休みということに相成ります。もともと一年ぐらいテストケースでやれたらいいかなあと遊び半分どころか全文遊びだったような内容を、幸いにしてご好評いただけたようで実に感謝するところ大でありますぺこり。


アイサツやスピーチは苦手なものでここへ来ての長文は避けますが、ながらくのご愛好誠にありがとうございました。


じゃ〜ね〜 ピロシキ〜〜(ロシアの挨拶)

にほんブログ村 その他趣味ブログ 模型へ


「ところでこのブログの一連の記事はあたかも一人の個人が一人の視点で書いたような体を装っていたけれど、本当は総勢8人のメンバーによる委員会制度が不規則なローテーションを廻していたことに、誰か気がついた人はいるんだろうか?」

「最後にあからさまなウソをつくのはやめろ」

































































最後にオマケ。

「それでもタミヤの1/35ダイムラーが作りたい!」人向けにAM Vol.33のBBTページのスキャン画像を上げておきます。適度にディティールアップすればここまで持って行けるポテンシャルを持ったキットでありました。なおこちらの画像はオリジナルサイズを保存してあるので、画像をクリックしてフォトライフで開いて「オリジナルサイズを表示」にしたらもう少しデカイのが見られますよ。

オープントップ特集号にオープントップ車両の記事を寄せるとは、フィルにしては珍しく空気を読んでる回でもあった(w