バンダイ「1/144 HGCC ターンエーガンダム」

番組放送より15年、突然の風が吹いたHGターンエーガンダムです。以前に旧キットのレビューをやっておりますからそちらと比べるのもまたよかれ。


CCすなわちコレクト・センチュリー(正暦)の機体を扱うハイグレードキット、という扱いになりますが、一連のオールガンダムプロジェクトのラインに乗った製品化です。


これまでAGPのプラモはストライクガンダムやVガンダムなどバリエーション展開を見越したものがキット化されていましたから、本製品がアナウンスされたときはいささか驚いたことを覚えています。昔から色々とインパクトの大きな“ガンダム”ではありますな。


マスターグレード通算100作目であったMGターンエーガンダムが非常に傑作なキットで、あれで見方が変わったという人も多いのではないでしょうか?なにしろ俺がそうだ。 それを凝縮したような印象を受ける、やはりこちらも傑作でありましょう。


1ランナーに多色成型するよりも分割を増やして単色ランナーの集合で、より一層の細かな色分けを再現する。旧キットと比べてみれば1/144ガンプラの設計進歩がよく見て取れます。


改めて目に見るとホワイトをベースに各差し色の置かれたポイントがRX-78ガンダムとほぼ等しい位置にあることがお判りになるでしょうか?クリアイエローで成型されたキャノピーは初代ガンダムで言えば大気圏突入フィルムの展開ハッチがあった場所で、ある意味ではマークIIνガンダムよりも正統的な「ガンダムを再構築する」デザインだったのだなあと今更ながらに。


ビームサーベル刀身はクリアーパーツ、シールは少なめ。このあたりはHGの基本フォーマットと言えるでしょう。


ポリキャップは見慣れたPC-001Aでありますが、ご覧の通りホワイトカラーで成型されています。ポリキャップって「ポリキャップの色」でなくてもいいんだ……と、なにやら目からウロコ(笑)そもそもポリキャップが長年の黒やグレーの一色であったのは外部に露出する部分を「関節のメカニズム」に見立てるためで、完成するとほとんど見えなくなる設計であれば、むしろ見えるようであっても「ポリキャップはどんな自由な調色で成型してもいいんだ!」ということなんだろうなあ……


パーツ表面には繊細なラインのモールド……も勿論のこと、細かく分割して成型されたパーツひとつひとつの曲線に魅力を感じます。


機体本体だけでなく兵装関連も細やかなつくりで、旧キットがシド・ミードのラフスケッチを確認するようなものであったのに対してHG版は劇中の魅力を十二分に再現するものだと言って宜しいかと。



ボディ部分の分割も劇中どおり、前後のパネルラインも綺麗にモールドされています。いわゆる「肩アーマー」の後半部分は直接背部に接合される配置で若干可動します。


頭部の微妙な局面も文句なしの形状で、例によってヒゲ部の安全対策フラップは削除しました。目元のシールが無事貼れてそれは良いんだけれど、額のマークはいささか強引な気がする(w ここは塗装したほうがよいかもしれませんね。


腕部は肘の関節部分にロール機構を備え、で関節構造自体が設定どおりに球形なので、単純な一軸関節でも幅広く可動します。シド・ミードによるオリジナルデザインではここから更にスライド機構が設けられているのですが、サイズの問題からさすがにそちらはちと無理か(MG版では完全に再現されています)。黒のラインはシールが貼られています。ライン取りはともかく構造、ユニットのシンプルさはやっぱり初代ガンダムを踏襲しているんだなあ……


なんであれターンエーの立体いじるときにはお手元に「ミードガンダム」一冊用意しとくといろいろ昂ぶりますねい。上半身組んだだけでも好きなだけブンドド出来るぞ。


肩アーマーは肩関節と同軸で回転可動、関節部分の引き出しにも追随します。


前下方へはかなり良く動くのですが、後上方への動きは若干制約を受けます。人型兵器であるからといって人間とまったく同じ関節自由度を持つ必要はない旨の発言がやはりミードガンダムには掲載されていましたが。


腕部とは対照的に脚部はかなり凝った作り。人間で言えばくるぶしの位置に可動箇所が設けられ、スネの外装は四分割されます。


組んでしまえばくるぶしの可動範囲はごくわずかなものですが、そのわずかな可動箇所でポーズに締りが生まれます。可変MSでもないのに大胆に動くつま先部分にも注目。


組み上げられた下半身。コックピット内部にはパイロットと思しき彫刻も一応あります。なんだか板切れみたいに見えるのは、ローラ・ローラさんが貧乳キャラだからじゃないかな(真顔)



股関節は前後左右に大きく動きます。余分な外装ユニットを持たないから、ここまでよく動くのでしょうねえ。


全身を前後から。武装していないほうが素直に形を見られるような気がするんだよな。改めてみると従来のそしてこの後に続いた「ガンダム」と大幅に違っているのは、そのアウトラインやモールドだけでなく基本的な人体バランスが異質なのだとお判りになるでしょうか? デザイン公開当時の「ヒゲ」や「コックピット」についての拒絶反応って、全体を捉えてみれば枝葉末節だったんだろうなあ……

人体の基本的な体型の捉え方の違いは、やはり日米格差というものなのかも知れません。このHGCCターンエーを見て漸く理解できたのですが、HGのストライクフリーダムガンダムが短足だといわれていたのは、ありゃ大和民族の伝統的な骨格バランスを模したものだったんだよ!キラ・ヤマトだけに(うまいこと言った顔)


脚部背面のスラスター・ベーンも立体感あふれる仕上がりになっています。そういえばシド・ミードへのデザイン発注とその後のスタッフ間でのやり取りからは「AMBAC機動」なんて誰も気にしてないとよくわかるぞ(w;


オプションパーツのひとつひとつも洗練されたつくり。決してパーツ数を贅沢に使ってるわけではないけれど、それぞれ必要にして十分な配分でしょうか。


ライフルとシールドを構えた標準的な装備状態。こうしてみると「ガンダム」なんだけどやっぱり異形なガンダムではある。後にSDガンダム化されたときにも驚かされたものですが(SDってある意味暴力的なリデザインではあるのです)


ビームライフルはグリップを収納、ストックを延長仕様に組み替えることによって最大出力モードを再現できます。トリガーは右手でしか握れませんが銃身を押さえる平手は左右ともに有り。


ビームサーベル刀身はSB-13ランナーが使用されています。全部を確認したわけではないですがHGUCのなかでも比較的細めの刀身を形成しているようですね。さすがに本編描写の「針」みたいな刀身と不可視の刃を立体で見せるのは難しい。ビームサーベル刀身が派手に発光しているのは富野監督はお嫌いなようですが、製品化を考えるとリアル志向が過ぎるのもあんまし良くはないのでね……


ビームサーベルのラックは単独のものとライフル/シールドを懸架出来るものとのコンパチ。劇中で見られたようにビームライフルを腰部にマウントすることは残念ながらキットのままでは不可能です。改造するのはそれほど難儀ではないと思われますが。



核ミサイルと月光蝶がありゃ他の兵装なんてオマケみたいなもんですぜ。などとロクに番組見てないのに知った風な口を聞いてみるテスト。胸のウェポンベイはビームカノン砲口部も開かれた上体です。


戦術核弾頭を一発運用するだけでやっとなGP-02Aが裸足で逃げ出すほど剣呑なモビルスーツなのですが、コアファイターのデザインは歴代ガンダム一、二位を争うほどに穏やかで平和なもの。そもそも「ファイター」じゃないんですよねこの飛行機。


ラフスケッチにある右腕にシールドを装備してウェポンベイを全開にした戦闘シーン(?)のポーズが好きです。いわゆる種ポーズとは対照的に見栄もケレンも無く、無機質な機械がなんの感情も乗せずに戦っているようでそこにシビレるあこがれる。の、ですが……


実際にポーズ取らせると見栄もケレンも無く単に地味なだけである OTL


や、決定稿では省かれた肩アーマーのビーム砲塔(後にターンXの武装に継承された)とかラフスケッチの見どころは色々あるイラストなのですよ?利き腕に銃を持たない盾の配置なんかはSEEDのブリッツガンダムに通じるものもあったりで……あ、GUNDOM Evolve みたいなフル3DCGで描画したら、このデザインに見合った新しい魅力を演出出来そうな気がする。


旧キットレビューやったときにも書いたのですが、どうもビームライフルを如何にも「銃」としてデザインしたり演出したりするのを忌避していたようなのですな。例えばガンダムUCのジェスタなどは現に実在する銃器をそのまま拡大化したようなビームライフルを持っているのですが、「未来の世界のリアル」を構想する際に現用テクノロジーとどのような距離を持つかは割りと大事な問題でして。これでもしターンエーがM16みたいに「リアルな」ライフルを持っていたら、複葉機や飛行船との距離感覚を表現できなかったかも知れないなー。


異形さや異質性ばかり書いてきましたけれど、アクションシーンを見てみればその格好良さはやっぱりガンダムのそれと同じでありました。白い機体、「侵略」に抗うもの、大人の陰謀の中で少年が理想を叶えるもの、そんなところか……


長く日陰者だったガンダムハンマーにスポットが当たったのは本作からでしょうね。残念ながら付属はしていないのでG30thガンダムのものを持たせてみました。何故に血まみれかといえばそれは過去記事の闇に理由があってだな。


「刻が未来に進むと誰が決めたんだ」とはターンエーガンダム主題歌西城秀樹が歌う「ターンAターン」の歌詞でありますが


誰が決めなくても刻は未来に進むものです


そのことを再認識させる二体のガンプラなのである。


HGCCターンエー、いまは品切れですけれど、もう少し刻が未来に進んだ今月25日には再生産分がメーカー出荷予定です!

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