新紀元社「ミリタリーディテールイラストレーション パンター 」

第二次世界大戦中に撮影された記録写真に写ったドイツ軍戦車の詳細なディティールを、イラストを起こして詳細に解説するシリーズ第三巻です。本書はWW2後半のドイツ軍主力戦車となったパンター中戦車を、D型からG型までの変遷に沿って合計44両収録しています。

一両に付きまずはカラーイラストで側面と前後を収録、所属部隊や記録時期に加えて迷彩塗装のパターンやコーティングの有無がここで確認できます。画像は90度起こした状態ですが実際にはA4変形判をタテの構図で使用し、折込に掛かることなく大判のイラストが記載されています。


更にモノクロの線画で前後を左右から鳥瞰し、個々の車体の特徴を解説していくフォーマット。当時のモノクロ写真では判然としかねる様々な情報が適時ピックアップされ、モデリングの格好の資料となることでしょう。


非常にスタイリッシュなデザインを持つパンターですが、いざ受領したドイツ戦車兵たちは無論スタイリングより実用性を重視したので、各戦区で使用されたパンターひとつひとつに現地部隊による改修や様々な追加装備が施されていたことが確認できます。泥臭さや人間味が垣間見えるのは今も昔も変わらぬ戦車の、そして戦車模型の魅力でしょう。


カラーリングではダークイエロー単色や三色迷彩など「一般的」と呼んでいいようなパターンから、


一風変わった冬季迷彩など、こちらもバラエティに富んだ様々な車両が収録されています。これら資料を基に個別車両を完全再現するも良し、自分なりにアレンジを加えて同時期・同地区での別個体を想像するのもまた良しといったところでさまざまな応用が期待されます。


独特の加工を施されたシェルツェンは色々なところで見られます。ちょっとした工夫で個性が出るのはまるでプラモデルのようです(本末転倒だ)。あんまり考えたこと無かったけれど、パンターのシェルツェンが四号戦車のような金網素材に発展しなかったのは不思議といえば不思議でもある。


生産時期や製造工場などのデータはありませんが、むしろそういった数値的なデータではなく戦場の実態に焦点を絞って考証を進めていくような内容と言えましょうか。数値データだけではリアデッキに長椅子積んでる利便性はわからないことでしょうから。


細部のディティール違いなどについても補足的に情報が追加されます。資料性の高い本であることに間違いは無いのですが、しかしどのページも構成としては同じなので紹介の仕方にちょっと困る(笑)


私見的な話で申し訳ないのですが、自分が戦車模型の格好良さ、面白さに気づかされたきっかけとなったのがタミヤMMのパンターG型でした。その後はだんだんと戦車模型の脇道細道に分け入ってしまって、今となってはあまりこのあたりの車両を顧みる機会は少ないのですが、それでもパンターの美しい姿形には中高生がアイドルに抱くようなある種の憧れ、王道的な良さがあるようには思います。近年戦車模型メーカー各社の製品もどんどんマニアックな方向に進んではいますが、書籍や雑誌などの「媒体」は例えベタだといわれてもメインストリームを提示していく必要がやはりあるのだろうと、そんなことを思いつつ。

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