幻冬舎「宮武一貴デザイン集 HIGHLY ORIGINAL WORKS」

日本のSFヴィジュアル界に長く活躍し大きな影響を与えてきた宮武一貴氏によるメカデザインを、コンパクトながら多様な観点でまとめたイラスト集です。

2007年とちょっと前の刊行書籍で収録されているのは「スタジオぬえ」創世記に手掛けたゼロテスターから近年のエウレカセブンまで、アニメーションを中心とした映像作品での仕事が主になります。70年代の東映作品で手掛けたようなスーパーロボットの透視図は貴重で、ここに上げたダイモスライディーンでは外形以上に全く異なる内部構造を心で思い頭で考え、そうしてデザインされたものを手描きの細密ペン画が美しく提示しています。


このような精密な解説図はもうご本人にも手掛けることが出来ず後継者も存在しないの寂いですが仕方が無いことでしょうね。単純に「CGではこの味は出ない」とか、それだけではないと思いますが……



本書の大きな特徴としては、限られたページ数の中で「さよならジュピター」や「テクノポリス21c」といったマイナーな作品の画稿を多く収録していることが挙げられるでしょう。どちらも今ではネット上で映像を見ることは不可能ではないにしろ、残された映像がデザインの魅力を伝えるかと言えば甚だ疑問符がつく作品。幸い「テクノポリス21c」はアオシマからキット化されているので稀に見かけますが、スキャニーのバストがパックリ開く所を再現した猛者はおらぬか。プラモの方でこれやっとけばアリイのラーナ少尉みたいに今でも語り継がれる存在となったろうに(w


幻の作品「機甲天使ガブリエル」のカラーイラストが掲載されているのは本書刊行当時の2007年には実に貴重だったことと思われます。直後にラピュータから完全版的な書籍が出てるので、ガブリエルに関しては現在ではそちらを参照するのがベストなんでが、あまり万人に知られていない業績にスポットを当てようとする本書の編集意図は伺えます。


エウレカセブン」のスカブ層上に立つ巨大なタワーや「舞-HiME」に登場するカグツチなど、メカ以外の分野に於いても揚力構造や空力効果を考慮したデザインが成されているのはさすがの仕事内容といえましょうか、日本のSFメカデザインを代表する重鎮のおひとりならでは。そしてカグツチのデザイン画には「空力的安定性がないと飛べませんので」と注意書きまでされてるのに本編では宇宙に飛んでっちゃうあたり、映像作品とデザイナーの力関係について考えざるを得ない内容だったりもする。「舞-HiME」でカグツチが宇宙に飛んでくシーンはエラくカッチョ良かったんで、映像としては勿論あれで成功なのでしょうけど(苦笑)


カバーイラストにも使用されているOVA版「宇宙の戦士」パワードスーツの図版が大量に収録されているのは実に画期的で、個人的にも本書イチオシのページ内容です。こちらも映像はネットに上げられたりしてますが、今でも見ることが出来ますが、ぶっちゃけ黒歴史みたいなもんですからその、ミナイホウガイイデスヨとゆーその、


しかしながらパワードスーツのデザイン自体はハヤカワSF文庫版のオリジナルを当時のアニメのスタイルに落とし込み、関節構造などは現実の大気圧潜水服をモデルに「リアルさ」を目指した意欲的なものです。立体化はOVAリリース当時にBクラブからソフビキットが出たぐらいで現在ではイベントGKでも見かけないのがいささか残念な格好良さで、今なら3DCGで限定された関節の可動範囲を計算して芝居させられそうなものではありますが、前述ラピュータの「ガブリエル」に掲載されてるインタビューを読むと、このデザインが陽の目を見ることはもう二度と無さそうなのである……


オリジナルと比べてハッチの開閉方向が変わっていること、ロケットランチャーが小ぶりの固定式になっていること、様々な変更点はアニメの演出優位に配慮してのことで、パワードスーツが一端ガンダム(いやガンキャノンか)に変化してまた戻ってきた様子が、特に顔の部分などに伺えて面白いカタチなんですよこのOVA版も。ではOVAでそのデザインを活かしたような作劇していたかと言えば……


だめだ記憶をたどってもつのだ☆ひろのOPをバックに砂浜を走るカルメンシータのキモイ笑顔しか思い浮かばねぇOTL


口直しに宮武一貴氏によるミニスカ女子高生とゆー、まことに貴重な画稿を貼ってまとめます。「舞-HiME」の時に鴇羽舞衣も描いてたとは知らなかったなぁこれ。ラフなタッチとはいえちゃんとアホ毛まで作画されてるのは素晴らしいですね!


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