グランドパワー誌2001年1月〜3月号掲載記事を単行本化した内容です。元になった連載記事は版元がまだデルタ出版だった頃の時代で当該号も既に絶版、日本ではまだ数少ないイギリス戦車研究本としては貴重な一冊でありましょう。
編成と運用を中心に、師団・旅団レベルのすべての部隊戦歴を網羅した辞書的な内容を中核にしています。第2次世界大戦当時イギリス陸軍の戦車大系が巡航戦車と歩兵戦車の2本立てであったことはつとに知られていますが、機甲旅団(Armoured Brigade)と戦車旅団(Tank Brigade)を勘違いしないためにも有用です。時々間違えます。
地味な書籍ではありますが、イギリス軍の戦車運用に対する独特の感性は窺い知れる一冊です。宗主国以外の英連邦諸国の事情を知りたくなるのは贅沢かな?
機動戦の主力となった機甲旅団が戦況に合わせて流動的に改編されていく様を見て取れる、これらの編成表が掲載されているのが本書いちばんの収穫でしょうか。ことドイツ軍では何年型装甲師団の編成が云々なんて昔から言われてますけれど、英軍ではあんまり取り沙汰されない話題なもので…
「表がイチバンです!」というのも大声で主張しにくい感想ではありますが。
本書後半は各戦線ごとにまとめられたイギリス機甲部隊写真集となっています。よく見るものから見覚えないものまで様々ですが、車体マーキングによる部隊解説などのキャプション含めて情景製作の手引きに向いた編集がされています。
とはいえ、
全ページモノクロ印刷で手に汗握ったり血涙を振り絞るような記述内容の本ではありませんから、余程のイギリス軍好きでない限りは学校で退屈な授業を聞かされるような気分で睡魔に襲われる危険があります。注意が必要です。
ですから、
本書の精読にあたっては快適な読書環境を用意し濃い目に入れた紅茶を欠かさず、出来れば執事のひとりでも侍らせておくことが肝心だと思う訳ですぞ紳士(語尾)