AKインタラクティブ「エイブラムズ スクワッド #4」

“THE MODERN MODELLING MAGAZINE”とサブタイトルされるように現用アイテムに特化したAFV模型雑誌エイブラムズ・スクワッドの第4号です。“MODERN”や「現用」といった単語の意味・用法は様々ですが、現代の世界で使用されている車両を中心に、第二次世界大戦以後の時代を幅広く捉えたものと考えればよいでしょう。今号の表紙には退役久しいガマゴートが載っていますし第5号の表紙はベトナム戦ですし。

編集・執筆の中核を占めているのは近年注目度合いも著しいスペイン系のモデラー陣で、特にヨーロッパ圏の車両やアイテムには強そうな印象を受けます。巻頭を飾るトランペッター製フェネック偵察車のニューキットレビューも、単に製品を眺めるだけではなくオランダ軍の実車フォトを併記して個々のディティールの再現性を伝えたり、ディティールアップのヒントにもなる資料性も兼ね備えています。現用車両の生きた状態を地元で取材できるアドバンテージは高いものでしょうね。


チャレンジャーIIの製作記事(こちらは英国人モデラーによるもの)ではトランペッターのキットが使用されています。タミヤ製品がリリースされて久しい今に敢えてこのキットを選ぶのは入手度合いや価格面など何かヨーロッパ特有の事情があるのか。と思うじゃない?

“昔作りかけて長年放置していたけど、友達が作ったチャレII見たら急に火が点いてさぁ”(意訳)

お、おぅ……ともかくトランペッターのチャンレンジャーIIはちょっと古いキットですけれど、古いだけに最近の同社製品とは違った設計思想で作りやすいプラモデルだったかと記憶しています。いまアーマーモデリング誌で募集しているトランペッターコンテストへの応募には良い素材かもしれません。



もちろんタミヤのキットも掲載はあり、今号では表紙にもなったガマゴートとT-55エニグマが紹介されています。ガマゴートはほぼ素組みのレビューですがエニグマはアドオンパーツ製レジンパーツを使用してのディティールアップで

タミヤのトイみたいなパーツをモア・リアリスティックにするぜ”(意訳)

的な内容です。どちらも仕上げはアクリル塗料の重ね塗りと剥がし具合、ピグメントを多用した泥汚れなど最近流行りのスタイル。誰かそろそろこの手法に気の効いたネーミング付けちゃってくれないものかしら。


流行り廃りよりは昔からのことですが、海外特にヨーロッパの鉛筆は成分素材が日本のそれとは違っていて、金属色がすばらしい発色を示します。この光沢を手軽に出せるのは実に羨ましい限りで、マテリアルの特性に合わせた塗装方法や仕上げの違いがお国柄の違いになるのかな?フリウルのメタルキャタピラ使用率が高いのはハードウェザリングの手法に合致した選択なのでしょう。


巻末にはISAF傘下のアフガニスタン駐留ドイツ連邦軍車両の資料写真が掲載されています。様々なカモフラージュやマーキングなどはキット製作の際に参考となるところ大ですが、むしろ周囲に詰まれたコンテナやプレハブ建築など駐屯地の生活風景にも面白い情報がありそう。イタレリのシェルターがいまこそ輝くとき!あ、絶版だ……


キットニュースやメーカー/ショップの広告ページも現用アイテム成分多目かつ日本にまだあまり広まってない製品もありで興味深いのですが(、イージーメタルリンクスの連結キャタピラは面白そうです)何故だかブリックワークスのノーズアートクイーンが唐突に掲載されています。紹介文にはMaK関連アイテムについても言及がありますがなんでしょうねこれやっぱり趣味ですかね?現用は生々しいという理解で宜しいか。


生々しいと言えば今号で最も生々しいのはこの記事を書いている現在只今も続いているシリア内戦のBMP-1でしょう。トランペッターのキットにフリウルのキャタピラ、パンツァーアートのレジン転輪とETモデルのエッチングを使用してハードにディティールアップされたモデルです。そしてどんな繊細なディティールよりも、車体側面に無造作に吊り下げられたRPG避けの古タイヤとサンドバッグが現代戦の生々しさを伝えます。


この特徴的なサンドバッグの製作には、ブルタック(別名「ひっつき虫」)を芯材に使用し周囲を plastic bag で包みこんで自然なシワを作り出しています。この「プラスチックバッグ」というものが具体的に何を使ったかが判ればよいのですが、エポパテで造形するよりもシワを寄せやすく、弾性を保ったまま車体に固定できるのはいろいろ応用出来そうなテクニックかと思われます。


防水布には新聞の切れ端を使っているようです。高価なアフターパーツを使うだけでなくこのようなちょっとした工夫、極めて私的なアレンジメントに惹かれるのは洋の東西を問わず、またモダンもWW2も関係なく楽しいところかと。


流行りのスタイリングをまねるには決まった手順を学ぶことが大事ではありますが、それだけで済ませるのではなくそこから色々広げていくのが模型制作の醍醐味です。「パッケージの表示通りに作るのが一番美味しい」と言われても、ひとはカレーに隠し味を入れたくなるものです。


BMP-1製作記事にも資料として実車写真が掲載されています。ワルシャワの軍事博物館に展示されたこの個体、積もった落ち葉が哀愁を感じさせてなかなか良い写真なのですが「現用」の持つ生々しさを感じるにはyoutubeなどに投稿されている実戦映像のほうが鮮烈なのだろうな……


これまで日本の戦車模型メーカー各社が現用アイテムを注意深く扱ってきたのも、それなりに理由があることでしょう。そして本誌記事内にWW2モデラーは“loyal”だ、と半ば風刺的に記述されていて、それもよくわかるんだよなーうーむ。


あんまり深く考えずに素直に楽しむのがいちばん(・∀・)イイ!! んでしょうねきっとね。

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