ファインモールド「1/35 陸上自衛隊 高機動車 (機関銃装備) 隊員2体付」

陸上自衛隊の中核となる普通科部隊の主力車両、長年旧軍アイテムを多く輩出してきたファインモールドからのリリースです。同社の自衛隊アイテムも数を増し、本製品もキャンバストップバージョンとの同時リリース。機関銃装備版キットのほうが若干お値段お高いですが、その分こちらにはフィギュアがセットされています。

ファインモールドらしい、組み立てやすいパーツ構成・設計になっています。演習や基地祭だけでなく自治体と合同で行われる防災訓練や各種イベントにも顔を見せることが多い(静岡ホビーショーなんかはもう「常連」って感じですね)車両なので、このプラモデルには「一般向け」の側面もあるのではないでしょうか。


スライド金型を使用したボンネットはAAパーツとして独立しています。



Bランナー・Cランナーとも機銃装備/キャンバストップ共通パーツ。



クリアーパーツのDランナー、デカールエッチングも共通です。デカールが共通化されたためにこの機銃装備版キットには解説の無い部隊も製作が可能なのですが(空挺団など)ひときわ目立つ災害派遣のマーキングは本キットに付属していない幌のパーツに貼り付けるものなので注意。ファインモールドの地元愛知県の部隊を作れるのはいかにも地産地消でよいのですけれど。



機銃装備版のオリジナルパーツはこの2ランナーになります。5.56mm機関銃MINIMIと固定フレームからなるEランナーとドライバーとガンナーのフィギュアのFランナー。ドライバーはキャンバストップ版のキットにも使用可能でしょう。


全体的にシャープで硬質なモールド、成型になっています。歴代ファインモールド製品の中でも年代的には最も新しいアイテムと言うことになるのかな?(スターウォーズは大昔の宇宙を舞台にした作品ですよ)


ボディパーツ、特に荷台部分も綺麗なつくりです。こと軍用トラックの模型と言うといろいろ荷物を載せたくなるものですが、この高機動車に関しては乱雑に荷物を積むようなイメージが全く無いので例え空荷でもさほどマイナスに感じられないのは良いですね。


ファインモールドに自衛隊車両はいくつもありましたが自衛隊員フィギュアは初めてのこと!とプッシュしたいが実は雲谷三曹というひとがおってだな。まあともかく1/35スケールで自衛隊員フィギュアは貴重なのです。


ここから組み立てパート。タイヤ部分はゴムを使わずプラのパーツで三分割、迫力あるブロックパターンを立体化しています。A7、A9パーツにはパーティングラインが走っていますがA8パーツ中央のディティールは実際のタイヤパターンなので注意。しかし実車写真見ると大抵の場合タイヤはドロだらけか適度に磨耗しているかのどちらかなので、あまり気にしなくてもいいのかな……


ラダーフレーム上に様々なパーツを取り付けていく、この手の車両としては平均的な構造です。本製品は12ページからなる取説のほかに補足訂正図が付属しているのですが、うーむそれでもB52・B53パーツの取り付け位置は若干あやふやになってしまったなあ。


シャーシーフレームとサスペンション周りまで組み立て終了。大径のランフラットタイヤと合わせて高い車高が特徴的ですね。近年調達されている11/2トントラックは高機動車とシャーシー共通化されているのですが、このキットパーツからバリエーション展開はできるのかな?


四輪駆動・四輪操舵を可能にする前後のサスペンション。キットのステアリングは固定ですが、タイヤ周りのパーツは十分実感が湧くものです。今回使用していませんがシャーシー後端のタンクにはデカールもあります。11/2トントラックでも救急車型は4輪操舵やらないとかでサスペンションにもいろいろあるのかしら。



インパネ周囲もスピードメーターはじめデカールが用意されています。Youtubeで見た乗車体験時の映像ではドライバーの隊員がAMラジオも聴けると解説されていました。FMが入らないのは昭和の乗用車みたいで急に親近感が増します(笑)


フロントグリル内側にはラジエーター、見える範囲でのパーツ化です。


リアランプもクリアーパーツ、実車ではゴム製の後輪のマッドガードはプラパーツですが自然な波打ち。そういえば前輪には無いのねマッドガード。


荷台部分、ベンチシート下にちんまり座しているのはこれヒーターでしょうね。あまり効かないという話ですが、たぶんいちばんエライ人の指定席じゃないかな?かな?


取説のSTEPでいうと15〜16のところ、まずは荷台後部にフレームを立ててその後シートの支柱を取り付ける流れなのですが、この手順は逆にしたほうがやり易いかと思われます。E1とE7/8の間にC5パーツをねじ込むのはちとめんどいぞ。


シート背面には突き出しピン跡が残ってます。幌付きなら問題ない箇所ですがこちらの場合は丁寧に処理しておきましょう。


ボンネットはクリアーパーツとエッチングで仕上げられます。エッチングはこの箇所のみに押さえられ、硬めの素材なのでそのままぴったり接着できます。イベントなどで本車に体験搭乗した人が、その場の興奮でプラモデル買って帰られても十分製作できる内容でしょう。


両サイドのドアは開閉選択式、フロントグラスは固定なのでCH-47ヘリ搭載時のように折り畳んだ状態にするには若干の工夫が必要そうですね。なおフィギュアを乗せるつもりの方はこの時点(STEP20)ではまだドアを接着しないほうが良いと思われます。


ボディとシャーシを接着しその他タンク類なども取り付け。排気管が上方に抜けてないのはいいのかな?延長するのは難しいことでは無さそうですけどね。この画像では判り辛いのですがボディ下部にはジェリ缶がひとつ固定されています。キットにはジェリ缶用のステンシルデカールも付属しますがなんですね、自衛隊仕様のジェリ缶やドラム缶のパーツもほしくなりますねこういうの見てますとね。

ところでボディ下面にいくつか開いてる穴はなんだろう?部品取り付け用にも見えないけど単なる実車のディティールか、それともバリエ展開か何かのためか……


フィギュアのディテールが見え難かったのでここだけ背景シートを変えてみました。1/35スケールで現代の自衛官フィギュアといえばタミヤのイラク派遣隊員セットがありますが、あちらよりは軽装で幅広いシチュエーションに使用できそう。


一部パーツの取り付けが甘いように見えるのは、この後ハンドルや機関銃と合わせるために剥がせるのりのピットマルチで仮組みしての撮影ですので念のため。


フィギュアを乗せれば完成です。普通科の要、陸上自衛隊の完全機械化を成し遂げた車両としてこれからの時代も大きく活躍する車両でしょう。車格としてはジープより大きめ、トラックとしては小さめなダッジ3/4トンとかに近いものなのかな?2+8名の乗車定員10名は小銃斑一個の定員を運べるもので輸送車両として、また各種兵器の運用車両としても様々に使用されています。本車の運用は1993年に開始され(制式年度を持たない装備品のはしりですかね?)導入当初は米軍HMMVYのコピーだとか「ジャンビー」だとかいろいろ陰口も言われたものです。がーしかし、イラク戦争アフガニスタン駐留を経てハンヴィーがどんどん変な車両になっていったおかげでか、最近はあまりそういう話を聞きません。良いんだか悪いんだかわかりませんけれど。


箱絵のシチュエーションは富士の総合火力演習のようで、キットの想定も演習状況なのかな?各地の駐屯地で行われている展示演習を見る(動画サイトにいろいろ投稿されてます)と戦闘の際前面に立つのはやはり軽装甲機動車で、本車の役割は人員輸送と支援を主にしているようです。小銃班をそのまま輸送するので機関銃には分隊支援火器MINIMIが使われるのだけど、普通科に30口径機関銃無くていいのかなーと、それはキットと関係ない話ですけれど。



導入当初から高機動車ハンヴィーのようなハードトップを持たず、一貫してオープントップで運用されています。外観はどうあれ米軍とは相当異なる運用がなされて来た車両であり、特に各種誘導弾キャリアとしての運用は世界に例を見ないほど多彩なもの。ファインモールドが本キットを発表したときにはそういった展開を含めてのことだろうと推察しましたが、ご存知の通り同社の次回作は61式戦車でこれは嬉しい驚きでした。時期的にちょっとだけ被るのよねこの二両。


注意点としてはドライバーフィギュアの取り付けがかなりタイトなものになります。まず両腕の無い状態で着座させ、ハンドル→両腕の順で取り付けフィッティングさせていく流れなのですが、運転席のサイドドアはフィギュア取り付け終了の後に接着すべきでした。さいわいウインド部分は木工ボンドで留めてたんでなんとかなりましたが一応念のため。またフィギュアに関して迷彩塗装が大変と思われる方には新撰組のデカールがお薦めです。これってモデルカステンがイベント販売する1/35中村桜さんフィギュアにも使えるのかな?


陸自アイテムも各社からいろいろ出揃って様々な状況を製作できる昨今ですが、普通科の顔的存在である高機動車ならばより多彩なチュエーションでの使用が可能なものと思われます。キャンバストップ版は災害派遣時を作れそうな仕様でしたがこちらならばオープントップの荷台を生かして民間人を乗せて走る体験乗車のディオラマなどが面白そう♪物騒さばかりが自衛隊じゃあないのです。

…山ほど武装と荷物を満載してLRDGかラットパトロールっていうぐらい物騒なのも面白そうですけれど。

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