モデルアート「艦船模型スペシャル 50: 第一次ソロモン海戦」

モデルアートの艦スペも巻を重ねて第50号。今回は「進撃の三川艦隊」と題して第一次ソロモン海戦に参加した両軍艦艇を取り上げています。


ちょっと前に出た本ですけど「進撃の巨人」実写映画のTVCMも流れたことですしってそういうノリが過ぎるのも果たしてどうなんだろうか(苦笑)

巻頭を飾るのは当時第八艦隊旗艦の責を務めた重巡洋艦鳥海、アオシマ1/350の「リテイクバージョン」を使用した作例記事です。


メーカー純正のエッチングやライオンロアのディティールアップパーツを使用した解像度の高い作例は艦スペでも恒例のものですが、あらためて鳥海の魅力、高雄重巡の格好良さを隅々まで魅せてくれます。


艦隊旗艦の任に就くため司令部機能を有する大型の艦橋構造物、艦隊決戦の補佐とも成り得る大火力を集中配置した武装類。日本海軍のいわゆる条約型巡洋艦の完成形として建造された高雄型が、まさしく望まれた通りの形で艦隊を指揮し砲雷撃戦に勝利した第一次ソロモン海戦こそは、ミッドウェーの敗戦からガダルカナル失陥までの時期において数少ない日本海軍勝利の記録のひとつです。


高雄型のなかでもこの鳥海は最後まで大規模改装を受けることなく過ぎましたので、喫水線上の重厚さと巡洋艦船体のスマートさを併せ持った竣工時の姿をほぼ保ったままでいます。これらをして「醜いカバ」と言い放ったジェーン年鑑、欧米各国の海軍関係者は第一次ソロモン海戦の敗戦を受けてさぞや顔色をなからしめたことでしょう。ザマーミロ!カバさんのこと愛宕なんて言うからだ!!


そんな気分を満喫できます。


その他、1/700スケールで参戦各艦艇を製作しています。アオシマWL鳥海もすっかり定番アイテムではありますが、やはり良いものは何度見ても良いものです。


様々なエッチングや素材を駆使してハードにディティールアップされた本作例には既にコレクションされた方でも新たな発見が、まさにこれから艦船模型の大海に繰り出す方には大きな驚きを与えてくれることでしょう。やはり鳥海はよい。なにがよいってそりゃメガネだ。


鳥海のみならずこの海戦には日本海軍の様々な巡洋艦が参加しているので、三川艦隊をそろえただけでも巡洋艦系譜を垣間見られるのは面白いところです。ハセガワの青葉や加古も素晴らしい作例が掲載され、特に青葉は昨年の(最後の開催となった)JMCでマスターズ賞を受賞した作品。こうして大判のフォトが書籍に掲載されれば会場では気がつかなかった細部も十分観察できます。


いまや大人気の天龍やタミヤの古いキットが長年現役の夕張も参加していて、三川艦隊はいろんな意味で美味しい編成だったのですねえ。しかし「大正八年生まれの『天龍』は、海戦当時すでに熟女である。キットのほうも1973年生まれだから四十路」って怖いな、フフフ…


と、艦これの提督方々を意識した編集内容は様々な箇所に見られます。大型艦ブームを越えて近年の艦船模型スペシャルの、これはひとつの特徴でしょう。今号の内容では古鷹と衣笠の作例が純正エッチングとプラパーツのみに抑えた初心者・入門者向けの製作内容で、僅かな工夫(と建造予算)でワンランク上の完成品を構築する手法を解説しています。


外国艦はさすがにインジェクションキットが少なく、オーストラリア海軍のキャンベラ、アメリカ海軍のシカゴ両重巡葉どちらも海外メーカー(コンブリック/コルセア・アルマダ)のレジンキットを使用しています。船体をくり抜いて内部に鉄パイプを仕込んで反りを修正するシカゴの製作はかなりの技術が要求されるものですが、ほぼ同等の条件下でも全く異なる姿を見せる太平洋戦争時代の巡洋艦は、各国艦艇作り比べてこそそれぞれの魅力が増すものなのかも知れません。


先日当ブログで取り上げて地味だ地味だとブーたれていた(笑)ピットロードのニューオーリンズ級もビンセンス・クインシー・アストリアの三隻がそれぞれ違った方法のディティールアップ、異なるカラースキームでページを華やかに彩っておりました。おうなんと格好良い。まるで五十鈴が改二になったかのような艶やかさである。



参加艦艇を駆逐艦で比べると夕凪よりはタルボットのほうがオモロイ形をしているもので、外国艦にもまだまだ魅力あふれる個性的な存在がいくつも控えていそうです。特集記事はこれら作例のほかヒストリカルな読み物もあっていつも通りの濃い内容。ところでしかし、三川艦隊って連合軍の水上部隊を撃破したあとはガダルカナルに進撃せずに帰還しちゃったわけなのですが(それにはちゃんと理由もあるのですが)、それでこの特集タイトルってどうなんでしょうね(w;


ニューキットレビューではアオシマの1/350伊365丁型潜水艦、タミヤの1/700アメリカ駆逐艦ハムマンが取り上げられています。「日本海軍艦船図鑑」は引き続き水上機母艦瑞穂の詳細、「紀元二千六百年特別観艦式を作ろう!」は駆逐隊の各艦を製作。そして「ラベール・アーカイブス」はジョン・F・ケネディとモノグラムの空母キット群をまとめて紹介する内容。


黎明期のバルサウッドモデルにおどろかされつつも、1/790や1/820といった中途半端なスケール表記がいわゆる箱スケールで16インチ共通サイズのモデル化のためとあらためて気がつかされます。日本で言えばニチモの30cmシリーズがまさに相当するグレードで、いまでこそオーセンティックスケールこそが艦船模型(のみならずプラモデル全般)の主流ではありますが、むかしはこっちの航路もあったんだよな……と何かね、ちょっと考えちゃいますね色々。

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