大日本絵画「スケール アヴィエーション Vol. 092」

スケビ92号の特集は「フィンランド空軍 Part3」。今回は戦後の機体を中心にフィンランド空軍の歴史全般を扱う内容です。


フィンランドという北欧の小さな国家が20世紀の時代にソ連やドイツといった大国の狭間で辛酸を舐め苦闘を続けてきたことは「雪中の奇跡」をはじめとする一連のアートボックスの書籍や関連記事によって日本に紹介され、現在では幅広く知られてフィンランドに親近感を抱く日本人も多く在ります。


雑多な機種で部隊を編成し強力なソヴィエト空軍を相手にしたフィンランド空軍の活躍はよく知られるところ。雑多な機種で編成された空軍であれば現在に至るまで世に弱小空軍のネタは尽きまじでしょうが、驚異的な戦価を挙げ戦争の趨勢に大きく影響した点ではフィンランド空軍の右に出るものはありません。


ナチスドイツの旧同盟国・敗戦国の側に立って始まった戦後の冷戦時代でもフィンランドの持つ独特な政治的スタンスは変わらず、「フィンランドソ連友好協力相互援助条約」によって醸成された「西側だけど東より」な立場は東西両陣営の器材を共に備えたユニークな軍隊を作り上げました。ヒコーキプラモとはそれほど関係ないのですが、この時期のフィンランドはしばしば冒険小説の舞台になったりもしました。ギャビン・ライアルの「もっとも危険なゲーム」は実におススメの傑作です。


MiG-21とドラケンが同じ空を舞う、「エリア88」好きにとっては夢のような国家でありました。陸物関連でいえば世界で初めて当時最新鋭のT-72戦車が輸出配備された国であり、小さな国家でありながら何かにつけてその存在は大きなものでした。


そんなフィンランド空軍でしたが、現在は作戦機をすべてF-18ホーネットに一本化され安定した運用が成されています。往時を知る身としてはいささか寂しいものでありますが、本特集は個々のキットレビューやディティールアップよりも、フィンランドフィンランド空軍全般についての理解を美しい写真と誌面で学べるような内容です。


連載記事が特集と連動するのもいつものスケビの安定した構成です。「名機100」第88回(おお!)は青いハカリスティも美しいハインケルHe50水上機、「ハイブリッドプレーンワークス」ではフィンランド空軍で空の真珠と称えられたブリュースターバッファローをカラフルなレーサー風味にアレンジ。派手なカラーリングはビヤ樽というより缶ビールのようです(笑)


松本州平氏によるウイングナット・ウイングス作例はフォッカーD.VII、AML製のデカールを使ってフィンランド空軍仕様です。記事タイトルこそ「改造しちゃアカン」でありますが、今回はスキー脚などの改造が施されてます……


滝沢聖峰氏によるコミック「山賊号出撃ス」はVol.86号に続くスウェーデン貴族カールグスタフ・フォン・ローゼン伯爵を題材に採ったもの。私財をなげうって小国の独立戦争を支援する一種「義勇」のひとではありますが、ひょっとすると人の争いごとに首突っ込んで爆撃して回るのが単に趣味のヒトだったんではあるまいかと疑念もよぎる(w


何にせよ今号いちばんの見どころはフィンランド空軍ミグ21戦闘機用装備品、ロシア製与圧服VKK-6Mの実物資料写真でありましょう!リアル「宇宙戦艦ヤマト」はソ連にあったんだ!!ああ「真っ赤なスカーフ」ってそういう……

にほんブログ村 その他趣味ブログ 模型へ