モデルアート「艦船模型スペシャル 47: 南太平洋海戦」

艦船模型スペシャル第47号、1942年10月に起きた「南太平洋海戦」(米名:サンタクルーズ沖海戦)特集です。ミッドウェーから4カ月後、ガダルカナル島と周辺海域を巡る攻防の中で勃発した日米空母機動部隊同士の対決。


第一航空戦隊に編入された空母翔鶴、第二航空戦隊で奮戦した隼鷹をはじめ参加艦艇を1/700スケール新旧キット混在で紹介します。近年のフジミ製翔鶴の出来映えに引けを取らないタミヤの隼鷹には、以前より傑作キットの呼び声が高かった内容が伺えます。



これに対する米艦隊はエンタープライズとホ―ネット。エンタープライズは昨年発売タミヤのヨークタウンを使用、これも実質的には70年代開発のキットと、ピットロードの2006年製ホ―ネットとの新旧共演のような記事構成となっています。ホ―ネットといえばドゥリットルの東京空襲でB-25載せてる印象が強いので、これはちょっと新鮮なイメージ。


太平洋戦争の戦史全体を通じてはややマイナーな位置を占める(当事者的、同時代的には決してそんなことはないのでしょうが)南太平洋海戦、著名艦艇のキットでもこの時期を想定して製品化された例はほとんどありません。そこで考証と工作が大事になるというわけで、金剛を製作するために霧島のパーツを大幅に利用したり、この時期の瑞鳳にはむしろ祥鳳のキットを使用するべきであったりと、ちょっとした発想の転換が求められます。


参加艦艇キットリストはよい参考になり、1/700キットでは水雷戦隊を始めとして日本海軍艦艇は補給船団に至るまでインジェクションキットで入手可能。さすがにアメリカ艦になると海外メーカーの入手難なものも含めたレジンキットが並ぶのは、それは仕方がないことか。


一般教養のレベル、教科書的な内容ですと太平洋戦争の日本海軍はミッドウェー以降負け続きのような印象を受けるかもしれません。しかしながら本海戦ではアメリカ空母に一隻撃沈、一隻大破の損害を与え、米海軍をして「史上最悪の海軍記念日」と言わしめる勝利を得ています。日本側としては戦没艦こそなかったものの多くの空母艦載機と熟練搭乗員を失いその回復を遂に得ず、主戦場たるガダルカナル島は後に失陥したためこの海戦の意義や資料はあまり重きを置かれていないのが現状ではありますが、それ故に考察記事や資料解析には貴重な情報が多く含まれています。



今号では毎回恒例となっていた巻頭の大型モデル記事がないのはいささか残念なところではありますが、新連載の「日本海軍 艦艇図鑑」が始まりました。航空母艦赤城の細部を、最新の考証と精緻なイラストでの解説する内容です。赤城は先日ハセガワがWLシリーズでのリニューアルを発表したばかりですから、これを予習として読んでもいいのかな?


ニューキットセレクションではバンダイ製地球観測船「ちきゅう」が取り上げられています。最近ではメタンハイドレートの試掘に成功して話題となった本船、取材写真を多く掲載して解説される実物の船体構造もさることながら、スナップフィット多色成形のキットをモデルアートの記事水準で製作する様が見どころでしょう。キット付属のシールをマスキング素材に用いるのは、ガンプラ等でも応用が効きそうな工夫か。なにか夢のある船舶模型ですねこれは。


「ちきゅう」がいま現在の夢ならば、こちらは昔見た夢かも知れません。好評連載ラベールアーカイブス、今回のアイテムは1959年初回発売の原子力貨客船「サバンナ」を取り上げています。1950年代、まだ原子力が人類に幸せな未来を与えてくれると信じられていた時代の夢の詰まった模型です。旧ソ連砕氷艦「レーニン」、日本の実験船「むつ」と並んだ原子力船舶の民間利用。嘗てはそれが模索され、何故それが放棄されたのか、今では語られることすら滅多にない存在ですが、こうして模型では当時の感覚や雰囲気に接する―しかも安全に―ことが出来るのですね。


原子炉直上にラウンジがあってそこでパーティーやってる構図って、当時はともかく今の目で見るとトチ狂ってるとしか言いようがない(w; アイザック・アシモフのSF小説(「宇宙気流」だったかなー)に腕時計サイズの携帯原子炉が出てくるとか、そんな時代のつかの間の夢ですね。

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