ハッピーミディアムプレス「エピックスケールサイファイモデリング」

Gary R. Welsh氏によるオリジナルSFモデルのスクラッチビルド解説指南書です。

洋の東西を問わずモデラーのやってることってそれほど違いはありません。本書は主にスターウォーズなどの宇宙船を自作するためのハウツー本で、そこで紹介されるマテリアルや工具、使用方法などについては概ね本邦で採り行われていることと変わらぬものです。流用パーツの多用についても今更言を改める必要が無いほどありふれたことなのですが、


「マイストックルームとロフト」のキット積み過ぎ状況も日本のモデラー諸氏とまったく変わらぬ 大惨事 夢の溜り場と言えましょうか。同病相哀れむとはよく言ったもので、「生涯を掛けて収集したキット群だ」と誇らしげに記されたキャプションには涙を禁じ得ません…

利用し易いプラモデルとしてはタミヤやハセガワなど、この手の記事では常連な日本製のスケールモデルがいくつも挙げられますが、それと同じくらいエアフィックスの絶版キットが遠慮なくビシバシ提示されている様にはうすら寒いものすら感じたりだ。日本ではとっくの昔に絶滅したこれらのプラモデルも、ひょっとしたら大ブリテン島ではしぶとく生き延びているのかしらん。


製作記事のパートはステップアップ的な構成で、まずは比較的小さなサイズのモデルを製作するところから始まります。BBC製SFTVドラマ「ブレイクス7」登場の Federation Pursuit Ship (残念ながら日本語名称は不明です。「ブレイクス7 登場メカ」で検索するとトップで引っ掛かるのはこのブログの過去記事だ…)、塩ビのパイプと厚めのプラ板でおおまかな外形を作りだし、細かいディティールの乗せていくことで解像度を高めていく。技法としてはオーソドックスなものです。


やってることは同じでも、本書の中核をなす「スターウォーズEP5・帝国の逆襲」版ネブロンA型クルーザーの製作記事ではあまりのデカさになんだか日曜大工みたいな羽目になってるは、欧米のモデリングではしばしば見られる事態なので心配するな。


基本となる船体が巨大でも、デコレーションは繊細なものです。このフネって古くは「病院船」の名前で知られているものですが、構成パーツは物騒な物が山盛り(笑)


ただ日本語版ウォーキーペディアの記述によると映画本編に登場したのは「ネビュロンB」型クルーザーなのだそうで、このモデルが「帝国の逆襲」に登場したプロップをどこまでトレースしているかは微妙。そのあたりの鑑定は模型業界に遍在するジェダイ騎士の方々にお任せする。


正しいかどうかなんてことはどうでもよくなるこの笑顔。背景を見るにこの撮影場所ってRAFミュージアムじゃないかしら。どうやらそこで催された模型展示会での撮影らしく、色々とうらやましいカットです。またこのサイズの模型を組める広い作業場と家族の深い理解を両方とも備えた人間力にはただただ感服する。


もちろんサイズばかりではなく、カメラを寄せて細部を見れば自作パーツや流用パーツの差異を見せない安定した仕上げ、ウェザリングなど見どころは多いもの。模型的な魂が細部に宿る点でも、洋の東西は問いませんね。


本書ではこの後のページでプロトネビュロンクルーザーを始めとするいくつかのモデルを製作して共和国艦隊を作り上げています。様々なサイズ・スケールの艦艇が一同に揃った見開き画像はなかなかの迫力で宇宙艦隊は不自然に密集してこそ華というべきか。


これら小型モデルの製作記事の方が、読者の側では直接反映させやすいものかも知れません。ここまでハードなミキシングによるスクラッチも昨今の模型雑誌では余り見なくなってしまいましたが、先の東京ホビーショーでは「宇宙戦艦ヤマト2199」を始めとしてハーロックやモーパイなどSF宇宙船アイテムが盛況だったこともありますから、このようなスタイルのモデリングが復興しても良いのでは…と思います。

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