「ホビージャパン別冊 SF3Dクロニクルズ」


1982年から85年にかけて、ホビージャパン本誌に連載されていた横山宏の「SF3Dオリジナル」全ての掲載ページをまとめて別冊化した書籍です。四半世紀前の雑誌記事って最早歴史的資料のような気がしますねえ。85年12月号で江川のイラスト「GAAAAN」で突然連載が終わって以来、ず〜〜〜〜〜〜っとこういう内容の本を待ち望んでいた身としては嬉しい限り。ワタシ連載初期の内容って全然知らんかったものでして「王鶏足伍長ってどんなヒトなんでしょ?」などといろいろフシギに思ってた人物やメカ設定etc. 知りたいことは全部載ってます。


筺から出すと中身は「天」と「地」の二分冊になってます。「天と地があって『人』が欠けているのわなにかのめたふぁーでしょうか」なんてことをウカツに訊ねるとクリスマスにオーストラリアで雪を降らせる仕事に強制労働させられますから、ここはひとつ「人ってのは俺たち読者のことなんだぜ!(ニカッ)」とか80年代の男性向けファッション雑誌みたいにさわやかな笑顔をうかべて読み進めましょー。


「どーせワシ連載記事全部持ってるけぇ、今さら再録本なんていらんのんじゃぁ」ってなベテランSF3Dファンの方々にも朗報で、連載当時のHJ誌より版型がひとわまり大きくなってます。見やすーい、読みやすーい。ちなみに参考に並べてみたのはワタクシが生まれて初めて買った85年1月号。特集はゴジラゴーストバスターズだw

ミクロマンの強化スーツをベースにスタジオぬえ風なパワードスーツに改造した「AFS」二種の作例から始まって、作例記事+フォトストーリー+イラストの三本立てのスタイルがだんだんと確立されていく様子が見られる初期の連載はいまでは却って新鮮で、


82年8月号、PKAの回で製作されたジオラマには直球ストレートにジープが登場してます。ちょっと今だと考えられないような気がする。でもこれはこれで「未来の非対称戦争」風味でいい感じだなーと思うわけです。

ファンコーナー、SFマイオリジナルなど読者投稿欄も完全収録で、当時の熱気というかノリというか今で言うところの中二病みたいな感覚がこー、なんでしょうね、「レポート用紙6枚に渡る設定とオリジナル小説」同封しちゃうイキオイがたまらん坂ですね。よくよく見てくと常連さんの腕前がどんどん向上していったり後々プロモデラー、ライターになった方の名前も見受けられてこれはこれで楽しい。時代が進んで技法や道具が変わっても、横山センセの画風ってあまり変わらないものですが、横山ファンの画風はものすごく変わったってことを80年代テイスト濃厚な投稿イラストに教えられます。吾妻ひでおとかDAICONフィルムとか、そーゆーのが流行してた頃ですなー。

この頃は「特撮教室」なんてコーナーもあったんですね。リアプロジェクションや多重露光などフィルムカメラによる数々のテクニックはまさに20世紀の神話だ…


最近だとデジタル画像加工のおかげでこの種の作業も随分身近になりましたけれど、この頃の撮影風景はなんだか見ていて楽しい。まるでお祭り気分(いや実際タイヘンなんでしょうけど)


84年8月号、グラジェーター初登場の回から。これですよこれ!これこそSF3Dの醍醐味の、フルスクラッチのモデルにアナログな特撮をやってモニター画面を撮影した写真。あの頃はこーゆーのがどえれえカッチョ良かったもんですはい。この手の画像処理を最後に目にしたのはMGのガンダムセンチネルかな?最近ではついぞ見かけませんね。にしても昔のHJはしゅっちゅう爆竹使ってたな。アッ○マーが粉々にされたとか、記事に書いてあったよなー。

この月を最後に市村氏が退社され、SF3Dの記事内容はいささか変化していきます。当時は全然気にもしないし判りもしなかったけれど、やっぱりストーリーの文体がつまらなくなってる。今井氏が抜けたことによってページレイアウトもダサくなっていく…のだけれどキャプションが写真にカブらなくなったんで、その点読み易くはなってる(苦笑)

以降作例に横山氏以外のモデラーが参加する割合も増え、送り手にも読者にも苫惑っている様子がほの見えます。揚田氏の作例記事がどんどんテンパった内容になっていく…当時インターネットの匿名掲示板がなくて本当に良かったなあと今さらながら思うw


この時期に発表されたモデル・デザインの多くがいまでは継子扱いになってるのも事実。今回の別冊化によってそれらがまた陽の目を見ることが出来たらなら、それは良いことなんじゃないだろうかと…はじめて買ったHJでのSF3D記事は揚田氏のケーファーでしたし、ワタシこの辺嫌いじゃないですよ?ウンディーネはどうなんだろうなーとか、思いますけど(w;


繰り返しになりますけれど、当時の作り手や受け手の熱気、楽しんでいる様が伝わってきて面白い本です。当時を知っている人も、これからMaKに入ろうって人にも、これは読んでて損はない。そんな内容。ひとつの作品からコンテンツが生まれ、それがマスプロダクションの製品になり更に…といった一連の広がりを追体験できます。

…そして長年半ば伝説的に語りつがれ、近年ようやく動画サイトで目にすることが出来たオリジナルビデオの、その内容には非常にモヤモヤした気分にさせられたんですけれど、やっぱり当時からみんなモヤモヤしてたんだなーとわかって安心しました^^;



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