エアフィックス「4ストロークエンジン」

さて休み前の予告通りにエアフィックスの大型モデル、「4ストロークエンジン」です。いやデカイのなんの、狭い撮影ブースにパッケージが納まらずに難渋しましたヨー。

何か期待に背くようなことがありましたか?

ええないですよね。それではレビューを続けます。


某声優さんによるインターネット模型紹介番組では「5回も倒産した」などと言われるほど歴史の長い老舗模型メーカーエアフィックス。現在では塗料メーカーのハンブロールなどと共にもっと老舗の鉄道模型メーカー、ホーンビィ社の傘下に入って活発なメーカー活動を再開しています。大資本による囲い込みは大英帝国に世界征服を成し遂げさせた原動力だと高校の世界史で習いました。なんでも現在ではエアフィックスのプラモデルはインドの工場で生産されてるとかでわーア×××争みたいとかいったらさすがに怒られますので紅茶貿易みたいですよ皆さん。

ところで「エアフィックスフライングアワーズ」って「モンティパイソンズフライングサーカス」みたいですね。フライングしかあってませんね。


キット自体はエアフィックスのかなり初期の時代からあるプラモデルのようです。当時の製品状態がどうであったか、流石に詳しいところはわかりませんが、現在では薄いブルーの成形色でパーツ化されています。(照明と画像加工で若干色味が飛んでます)


四枚の大きなランナーで構成されているのですが、よくみると巨大な一枚のランナーを四つに分割したものです。プラモデルにしては相当大きな射出成型機を使用しているようで、古くから大型モデルを指向していたのでしょうね。現在でもエアモデルを中心に大型キットを新規開発しているからこそ、こういうアイテムが副次的に再生産されてくるのかな?


古いプラモデルには稀に見られることですが、このキットのパーツNo.の割り振りってランナー配置には準拠しておらず「組み立てで使う順番」に通し番号が振られてます。故にパーツが隣り合っているからといって番号が隣り合ってるなんてことは全然無く、成型の都合で配置されたパーツ群の中から該当する番号を見つけ出さなきゃいけないのがちょっとした苦労。パーツリストでも印刷されてれば楽なのですが、そんなものはありゃしませんので頑張って探し出しましょう。


大きなパーツや特徴的な形状のパーツが多いのでさほど苦にはならないのですけれど、なんにせよ「むかしのプラモデル」だってことは念頭に置いたほうが吉です。綺麗なパッケージで最新製品だと誤解しちゃう事例っていろいろ不幸なことですからね。


プラパーツの他にゴムのチューブ1本と金属スプリングが2ヶ付属します。どうやら初期のロットには他にもいろいろ付属物があったらしいのですが、現行版ではこれだけ。詳しくは後述。


むかしのプラモデルだとは書きましたが、わずかなバリを除いて成型状態は概ね良好です。金型メンテナンスをしっかりやってることが推察されますねやはり大資本は大正義ですね。


むしろ昔のプラモデルならではの現在ではあまり見られないようなパーツの一体化に、技術よりもセンスで勝負していた当時のプラモデル設計者と設計思想の粋を感じたりです。実物と同じ分割ならば実物を見れば出来ることかも知れませんが、如何にして「実物とは違いながらも実物同様の質感を感じさせる」かは、これは頭を使うartなのですよう。


パーツの合いも基本的には良好でサクサク進んでいきます。いま作ってるパートが実際の4ストローク機関でどのような働きをするのか、何という名称なのか、そんな情報が取説に書いてあればなお良かったのですが、その辺ちょっと不親切ですか。とりあえずwikiのリンクを貼っておきますが、他にもいろいろ解説サイトはあります。実は別のサイト見ながらこの記事かいてます(w


ピストンとクランクシャフト、カムシャフトをエンジン本体に挟み込みます。


当初からカットモデルで設計された製品なのですが、やはりパーツを組み合わせていくと一部の機構、形状は見えなくなってしまいます。完成した状態だけでなく製作の過程でこそ、エンジン各部のパーツ配置と作動の仕組みを学べるモデルだとも言えるか。


カムシャフトに配置されるおにぎり状の形をした2個のカムとその角度に注目。4ストローク機関が4ストロークたる所以の部品です。


出力軸からつながる3つのギアにはやや身構えさせられましたが、そんな心配も杞憂に終わるほど難なく組み立てられ、動きもスムーズ。特にグリスとかイランのであります。


ギアケースからはクランクハンドルが伸び、これを回転させるとシリンダー内部でピストンがピストン運動!楽しい!! ✌('ω'✌ )三✌('ω')✌三( ✌'ω')✌


けれどおかしい。


おれはえんじんをつくっているはずなのに、なんでじんりきくどうさせているのだろう。


頭の中をクエスチョンマークが飛び交いますが、


実は取説もハテナだらけなのです。

……この部分クランクハンドルとキャップが選択式になってるんだけど、選択を示すアイコンを「?」にするのは人間工学的デザインとしてはいかがなものか。

しかしこのハンドルをキャップに変えたら却って回し辛いし、ますますよくワカラン。がー、そこは深く追求せずにすすめます。


AIRFIXの社名が入ってるこのパートがたぶん吸気管じゃないかと思うんだけど自信がナイ。でも混合気を作るからいろいろディティールがあるんじゃないかしら(じつはワタクシ自動車一般全然詳しくないのです。チャリで来た)


ロッカーアームから伸びる2つのバルブとスプリングを利用した作動ギミックは本製品いちばんのキモだから、絶対に絶対に絶対に43と46のパーツをマウント部分に接着するなよ!するなよ!!うっかり接着してしまった場合はエナメルシンナーでむりやりひっぺがすのでこれだからクルマ知らないヤツは困るんだよなうーむ。


エンジン下部でカムが回転するとそれにともないロッカーアームが連動し、


エンジン上部では吸気と排気のふたつのバルブが動かされます。ええ、この角度だと点火プラグが全然見えませんねェ……


上部のギミックもカバーされちゃうのですがこれを隠すのはさすがに勿体無いのでパーツ62は接着せずに乗せるだけにしといたほうがいいでしょう。


ここまでパーツNo.どおりに組み立て進めてきたのですがなんということでしょう、取説には63から85までのパーツの組み立て過程がまるごと乗っていないのです。


行程としては台座部分の組み立てになります。なぜか取説には何の説明も無く突然出来上がっている。なにゆえそのようなことが起こりましたかといいますと、どうやらこのキット、初期の版では台座部分にモーターを内蔵した電動プラモデルだったらしいのですな。そのためのギアや取り付けガイドはプラパーツで全部備わっているけど金属製の接点パーツがいつのまにか廃せられ、ディスプレイモデルに改められた……はいいけれど組み立て過程もざっくり削るってそれはどうよと


しかしネットの世界は広大なもので、調べれば昔の版の取説画像がみつかりました

https://www.flickr.com/photos/elsie/4283029908/in/set-72157623105317723

モーターや電池の配列についても記されていますので、接点を何とかすれば人力に頼らずとも自力で駆動するエンジンの模型を再現できるやも知れません。電動であればこそクランクハンドルの代わりをキャップで済ませて、プーリーからベルトを伸ばして動力を外部に伝達する……なんてことも可能なのです。そこまでやっての立体教材ぽい模型なのですな。仕組みだけ見るとピストンやカムの動きは単なる飾りで、モーターによる回転運動がそのまま回転運動としてエクスポートされてるだけなんだけど(w


というわけでこちらのセルモーターは完全なダミーとなります。ひと目見ればわかりますかそうですか。


しかしディティールは面白いのでここもカバーパーツの88は被せるだけにしておきましょう。ちなみにパーツ12のシャフトは本来中空であるべきなのですが、なぜかムクになってました。取説どおりにパーツ89をはめこもうと開口を試みましたが、冷静に考えたら穴開けるより89の軸をブッタ切ったほうが全然簡単であった……


ともかく、ネームプレートをとりつければ完成です。なんだかんだ言ってハンドル回すと内部のカラクリがキビキビ動くのは楽しいのだ(笑)


古いプラモデルではありますけれど、古い時代でないとこういったプラモデルの企画は通らないようにも思います。海外プラモデルでは人体や生物の解剖模型がありますが、性格的にはそれらに近いものなのかな?


ものの機構や仕組みを学ぶための「勉強道具」という点ではタミヤの工作シリーズが近しいのですが、あのシリーズも近年は「遊び」の方向にシフトしてるように思われます。夏休みの工作に「プラモデルはダメだけれど工作セットは可」という空気は、いまではどうなっているんだろう?そもそもいまでも夏休みの宿題に工作って出るんでしょうか。

もしそういう宿題があったなら、この4ストロークエンジン作って出してみたら面白いかもしれないのだけれど、やっぱりプラモは遊びの範疇にされちゃうかな、文部科学省的には。


そんなことはさておき、スケール感も何も無視してマッドサイエンス的なシロモノに仕上げたくなったのも確かだ。小さな人間が巨大なクランクまわしてエンジン作動……とかどうでしょうか。プラモデルは遊びです。

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