バンダイ「1/144 ターンエックス」

最近マスターグレード版が発売されたばかりのターンエックス、1/144の旧キットをレビューです。逆さにしたってXです。ところで正式な製品名は商標関連のアレから「モビルターンエックス」になってますが、最近こういう処置のネーミングってあんまり見かけませんね。やっぱり製品名に「○○グレード」を冠するのがスタンダードになったからか、それとも「モビルスーツゲイツ」がいろいろ無理筋だったからでしょうか?


そのマスターグレード版に併せてモデルグラフィックス誌が90年代ガンプラの特集を組んでました。いろいろ懐かしい話が載っていたりで年寄り的には面白い特集でしたな。考えてみるとこの1/144ターンエックスは単に番組中の立ち位置のみならず、ガンプラのスタンダードがワンコインだった時代のラスボス的な製品なのですね……


当該特集では500円クラスのガンプラ設計ではコスト管理が非常に大変だったと、当時の開発事情が回想されています。そういう視点であらためてこのキットを見ると、なるほど随所にコスト低減の処置が伺えますね。


大柄な機体を再現するためにランナー枚数は多いのですが、よくみると大判のランナーを(おそらくは手作業で)切断したもので、インジェクションランナーは製品全体で実は2枚しか成型されていないのです(ポリキャップは除く)。同シリーズのターンエーもやはり全体では2枚の成型品、ものすごく簡単に言うと射出成型機を2回動かせば出来る設計になっていますが、こちらは多色成型ランナーを使っている。


対してターンエックスは単色成型ランナーのみ。同じシリーズでほぼ同じグレードのプラモデル、定価は100円増しだったけれど製造単価はむしろ抑えられているんだろうなぁ……と、そんなことを考えます。無論こういう数字は単品比較だけでは意味が無くて、製造ロット数や再生産の頻度もふくめて全体予算が出るものなんでしょうけれど。


そんなメンドクサイことを思うのはキットがシンプルすぎて文章書くことが無いと頭を抱える人間ぐらいのもので、皆様方が500円のプラモひとつ組むのにそんなこと考える必要はまったくありません(笑)どうぞこのシド・ミードによるガンダム史上に残る屈指の傑作デザインMSを、リーズナブルにお手元に。


ポリキャップはPC-115プラスが使用されています。元々はガンダムXガンダムWの頃、ヒーロー体型のMSを共通企画で設計できるような構造として生まれたPCランナーで、このターンエーのシリーズではカプルやフラットまで動かしてたんだから当時の設計技術もみごとなワザマエであります。

それでこのキット、ランナーの状態でほぼ完璧な色分けなので特にシールは付属していないのですな、最初からそれも計算のうちでクリンナップされたのかなー。


変に差し色がちりばめられていない分、独特なデザインがされたフォルムを存分に楽しめます。ディティールもこの価格帯の製品としてはとても綺麗。


ウェポンラックに見られるような複雑な形状の部品を1パーツで抜くような処置は、細密化が進んだ最近のバンダイ製品ではあまり見られない構成なので却って面白いものです。しかし何度見てもアンドアジェネシスであるなこの部分は。


組み立て手順は脚部から。微妙に左右非対称なので注意して進めてください。可動範囲は当時としては一般的なレベル……。このMSの最大の特徴である分離合体機構は残念ながら備わっていないので、シンプルな構造をバッサリ切り刻んで改造するのも、この価格なら躊躇なくできますでしょうか。


溶断破砕マニピュレーター“シャイニングフィンガー”を再現するのはさすがに難しいかしら。


基本フレームの前後をアーマーで挟むような胴体構造もモビルスーツとしてはかなり独特のもの。


頭部は独立して“ターンエックストップ”として飛行します。ラスボス機体が頭部にコックピットを持つのはジオングクインマンササザビーなど一連の富野由悠季ガンダム作品では割と伝統である。Zガンダムの終盤にそういう敵機がいないのは、Zガンダムのストーリーに決着がついてないことの証かな?TV版と小説版でのサイコガンダムMk2の扱いの差とか言い出すと重力に魂を引かれるのでそれ以上いけない。


背部ウェポンプラットフォーム“キャラパス”とバズーカ及びビームライフル。プラットフォームにはこの2種類の火器の他に設定上はハンドビームガンと3連装ミサイルランチャーが装備されていますが、TVシリーズ本編では未使用だったのでした(MGでは再現されています)


あらためて見るに、よくもまあここまでデッサンの取り辛いメカを当時の手描き作画で動かしたものだよなあと感服します。その煩雑さゆえ全体像が動き回るシーンは少なく、全身が分離するのも普通にアクションさせるよりはそのほうが描き易かったからではないかと推察されますが、「頭部や手足が分離して戦う」のはパーフェクト・ジオングのコンセプトを継承するものなんだよな……


今だったら3DCGで自由な動きを作画できるのでしょうね。ターンエックスに限らずフラットやカプル、勿論ターンエーも含めて「∀ガンダム」の登場機体はCGと相性が良さそう。MSイグルーやガンダムイボルブのような作品は、いまはあんまりやらんよーですが。


シャイニングフィンガーやオールレンジ攻撃のインパクトがあんまり強いんで、バズーカやライフル持たせてもいまひとつインパクトに欠けるのはこのキットの弱点かも知れない(^^;


ちょっとスミ入れしてみました。胸の傷跡を中心に、やはり締まって見えるものです。ギンガナム御大将は歴代ガンダムシリーズ登場キャラクターの中でも一、二を争うほど「人生楽しんでるヒト」で、その辺もまたターンエックスの魅力に寄与しているのでしょうね。


そういえばビルドファイターズにも出て来たな。分離合体完全再現の上全身金メッキに仕上げた権田先輩すごい。ゴリラに学ぶことは多い。


やはりHGターンエーと並べると見劣りしちゃうのは否めないでしょうか。流石に20年近く経っていますから流石兄弟のようにはいかないな俺ら。


ターンエックスのHG化は……さすがに無いでしょうねえ。あくまでターンエックスはターンエックスであって、ターンエックスガンダムではないのだよな……


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