ハセガワ「1/48 九州 J7W2-S 局地戦闘機 震電改 夜間戦闘機」

日本海軍十八試局地戦闘機震電の主機をジェットエンジンに換装した架空の機体「震電改」に新規デカールをセットしたハセガワの限定品です。



震電をジェット化するというのはあながち根拠の無い話でもないのですが、さりとて現実味がどれほどあったかといえば限りなく可能性の低いもので、現実よりは自由に想像を楽しむためのプラモデル。1/72スケールではいわゆる架空戦記ブームの頃からラインナップされていたように思いますがヨンパチでは比較的最近のものとなりますか。



キットは既存の震電のパーツをそのままにレジンの追加パーツが付属する構成です。プラとレジンのパーツは相性よく組み立てられ、とくに加工を必要とすることはありません。



震電自体も太平洋戦争末期の機体のなかでは日本独自の技術で開発された斬新な戦闘機で、昔から人気の機種です。要求スペック通りの性能が出せたのかあるいは出せなかったのか、どちらにしろはっきりしないので昔から期待を寄せられることが多い(笑)


レジンパーツは3個付属、綺麗に抜けてます。注型元の明示はされていませんがたぶんあそこが抜いたものだな、という高品質。


兵装関係のWランナーが2枚、刻印見ると震電専用というわけではないようで。


新規のデカールは2パターン。厚木の302空とドイツ空軍夜戦を双方共に1947年を想定したマーキングです。もしも1947年まで戦争が続いていたらドイツ空軍が日本製のジェットを使う謂れが無いとか、夢の無いことは言わない。日独混血夜戦ならハインケルHe219に日の丸描いてってのは押井守の「雷轟」か。いやあれは夜戦ではなかったか……


独特の形や生い立ちから人気のある震電ではありますが、かといって零戦ほどメジャーな人気を誇るものではなく、結果どうなるかといえば「昔からキット化されているが、そのまま更新はされない」わけでして、本製品のプラパーツも古式ゆかしき凸モールドの成型品です。スミソニアンに保管されてる震電が復元されたら新キット出るかもなーなんてことを考えたこともありましたが、そんなの待たずにいまは造形村のSWSがありますからして、ハセガワの震電とこの震電改についてはキットの素性をそのまま活かした方が宜しいかと思われます。


パッケージングは新しくとも中身のパーツは古い。わかっている人はわかっていることですが、何も知らずに「新製品」を購入してショックを受ける方がいらしたら、それはいささか残念なことです。この傾向は飛行機に限らずスケールモデル全般に危惧されることでして、おそらく「艦これ」パッケージの艦船模型で同様の事象が起きてるんじゃないだろうか……

艦これ」といえばあのゲームに出てくる「震電改」はジェットじゃなくて艦上戦闘機化されたものなのですね。震電を艦上化するのはジェット化よりも相当ヘンな所業じゃなかろうかと、まあ妖精さんが飛ばしてる飛行機なんだからそれはいいのか……


コックピットは少ないパーツながらもシート後部の酸素ボンベなど本機の特徴をよく捉えています。古いキットだけにパーツ取り付けピンが太くてがっちり位置決めできるのはよし。


機体左右パーツはしっかりと貼りあわせましょう。機種先端部分にはバラスト入れる指示がありますが、特に本機の場合は機体後部にレジンのムクでパーツが接着されるのでここは大事なところ。


主翼下面及び機体中央部には兵装取り付け用の隠し穴がありますので、取説に表示されたバリエーションに合わせて開口してください。ところで震電のオリジナルキットには特に武装パーツも無いのですけど、設計当初から装備品の拡張を見据えていたんだろうか。


士の字ならぬ「土の字」状態。エンジンノズルはイモ付けですがインテークはプラパーツの上に被さる設計です。ノズルはともかくインテークには若干隙間が出るかな……


垂直尾翼の補助輪を切り落とす指示があったのですが、さすがにそれは疑問を感じたので未加工のままで。また補助翼各部のマスバランスはどこも良いディティールです。


長い主脚は震電の特徴のひとつ、見るからに華奢なつくりです。」もしもジェット化で大型六翅プロペラが割愛されるならこの部分を再設計するのが本来あるべき姿なんでしょうけれど、言わぬが華というものだろうな(ってしっかり書いてるんだから野暮だよな俺)


兵装は大型・小型ロケットを左右の主翼に取り付けました。このほかに増槽パーツも付属します。


三分割されたキャノピーと機体下部のアンテナ線支柱を立てたら完成。先尾翼(エンテ)式レシプロ機は見栄えがするのでフィクションではよく見かけます。最近だと「とある飛空士への追憶」や「スカイ・クロラ」、古いところでは「王立宇宙軍」で先尾翼式のプロペラ戦闘機が活躍していました。エンテ機を「究極のレシプロ戦闘機」のように捉えがちなのは日本人の特色なのかな?旧日本軍の飛行機としては相当に斬新なものですが、広く世界を見ればエンテ機自体は既に各国で開発され、まず成功していないタイプの機体ですから……


推進(プッシャー)式のレシプロエンジンをジェットに換装した例といえばスウェーデンのサーブ21が挙げられます。「震電改」が語られるときには例としてよく言及される機体です。なるほど換装は上手く行ったのですが、それでサーブ21Rは良い戦闘機だったのでしょうか?ちょいと気になるところで。


夜間戦闘機なら八木アンテナとかあっても良さそうなものですが、本機は機種先端部分に「玉−3型」レーダーを内蔵する設定です。「玉(ぎょく)−3と名付けられたこの電探は、回転ビーム方式で機首先端に内蔵し、夜戦搭乗員は立体観を直観的に得ることができ、目標の選別や接近が容易に行えました」と解説されています。


えっ。


……あまり夢の無い話をしても仕方が無い、とはいえジェット化震電には根拠の無い妄想とも片付けられないことがひとつあります。ウィキペディアの記述によると震電を設計した鶴野技術大尉は「自然界に無い様な形状のものには何かしらの欠点があるはずだ。鶴野はそれに気づいていないのだ」と批判を受けたそうですが、ある種のイカはまさしくこういうスタイルで海面上を長距離飛行する事実が戦後になってから解明されました。そしてその駆動力は海水を利用したウォータージェットだったのです。ちょっといい話だ。


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