モデルアート「飛行機模型スペシャル No.003」

特集は「ベトナム航空戦2 アメリカ空軍機編パート1」、001号の空軍機編に引き続いたナム戦特集です。


空軍機とはうって変わってベトナムのジャングルに溶け込むような三色の迷彩塗装。通称「ベトナム迷彩」やとりわけ飛行機模型の界隈では「三毛猫」などと俗称されることも多かったように記憶しています。ベトナム戦争の航空機と言えばこちらのカラーパターンを連想する方も多いでしょう。


例によって新旧様々なアイテムを用いて同時代の機体を製作しています。新しいところではMENGの1/72F-102Aやキネティックの1/48F-5Aなど、ニューキットレビューとして新興メーカーの製品内容を詳しく知ることも出来ます。ところで「スコシ・タイガー」の作戦名称がある意味誤訳の産物なのは作例記事本文にも書かれた有名な話ですが、仮に「小さいトラ」を正しく意味する「チイサイ・タイガー」作戦になってもそれはそれでミョーなアトモスフィアだよな。


古いところではフジミ1/72、ハセガワ1/48でそれぞれ両者のF-4ファントムを製作しています。実機と同様どちらも長期に渡って市場に存在し続けるスタンダードなアイテムで、例え新製品の時期は過ぎていてもこのように大きく取り上げられる機会を得ることは喜ばしいことですね。


ヨンパチでも十分に巨大なF-111と対地航空戦のシンボルともいえるF-105Gワイルドウィーズル、どちらもホビーボスの新しいキットで、この分野でもアジア模型メーカーの進捗は著しいものです。現在の市場・ユーザーの動向を見据えた上で60〜70年代のジェット戦闘機のニューキットを新規開発できる意欲・体力はやはりすごいな。


21世紀の現代のグレーカラーとはまったく異なる泥臭い迷彩塗装、一種の獰猛さも感じるそれが、いわゆるセンチュリー・シリーズ各機の特徴的な外観をさらに獰猛なものへと変えています。トランペッター1/72のF-100F、ハセガワ1/48のF-104C、どちらも50年以上前の機械ではありますが現代の軍用機にはなかなか見られない魅力があるもので、激しい戦闘を繰り広げた歴史の重みが模型に凄みを加えているようでもあります。



旧モノグラム(現在はレベル)の1/48F-100D、同じくレベルの1/72F-105D、往年の名キットの魅力をそのままに伝えるのはモデルアート誌ならではの手堅い製作記事です。特にモノグラムのスーパーセイバーは現在の設計技術ではもうこういう模型は作れないだろうなと思わされる、なにか職人芸のような彫刻表現がステキ。


作例以外のページでもいつものように資料的価値の高い記事が掲載されています。米軍介入の初期から戦争終結までの空軍の展開と種々の作戦、参戦した各機体の塗装図やテイルレターなど模型作成のための背景知識から実際的なものまでこれ一冊でも十分に充実したものとなるでしょう。


特集以外のページでは「モデリングJASDF」がF-86Dセイバードッグを、これもレベルの古いキットを東京都立産業技術高等専門学校荒川キャンパスに保存されている実機を克明に取材してディティールアップ。この都立高専の機体が就役当時の状態を保った非常によい保存状況で必見の価値です。そのむかしまだわたくしがタマノヨウニカワイイオコサンであったころ、空時の某基地で展示されてたハチロクはDもFもエンジンブッこ抜いたドンガラで「ヒコーキってカラッポなんだ!」と誤った認識を植えつけられた苦い思い出があってだな……


その他スウォードの1/72トロージャン製作のために小池繁夫描きおろしの1/48図面が掲載されていたり、特集以外も見所は多い内容です。小池画伯は民間エアライナーや練習機などあまり物騒ではない機体を描かれる方が筆のすべりは良いようで、来年のカレンダーにもそんな機体がいろいろです(宣伝)


いささか紹介が遅れてしまいましたがニューキットレビューではハセガワ1/16ソッピース・キャメルF.1、タミヤ1/72零戦三二型を紹介して飛行機スペシャル003は好評発売中です。

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