MENG「1/35 ロシア GAZ-233014 STS 高機動装甲車 タイガー」

MENGモデル製、ロシア軍新世代装備の代表ともいえるタイガー装甲車のインジェクションキットです。本稿では英語表記の製品名に準じて「タイガー」呼称を使用しますが一般的には(例えばロシア・旧ソ連軍事アナリスト小泉悠氏の記事などでは)「ティーグル」と記述されていることが多いようですね。

なおMENG MODELの日本語表記について「原語の発音を尊重するなら『モンモデル』であろう」とのご意見もありますが、当ブログでは従来通りMENG、あるいはMENGモデルの表記を続けていくつもりです。理由は麺類が美味しい季節だからです。




アーマーモデリング2013年7月号の記事によればMENGモデルの独特の製品ラインナップはユーザーアンケートの結果やスタッフによる提案をもとに投票による選挙形式を経ているとのことです。予測のつかないサプライズ満載の理由はなるほどそういうところにありながら、やはり製品のラインにはいくつか「流れ」のようなものは感じ取れる気がします。

Eランナーは2枚入りです。


ボディとシャーシー、フレームはスライド金型を用いた一体成型。このタイガー装甲車は四輪自動車を立体化する「ヴェロキラプトル」のシリーズではいわゆるテクニカルのピックアップトラックに続くものなのですが、製品のフォーマットは一段の進歩を遂げているように感じます。そのことに若干弊害が見えるのも、また確かではありますが……



デカールは主に車内貼り付け用の迷彩パターンが主な面積を占めます。車内に迷彩というのも不思議な処置ではあります。




各モールドのキレ具合、精密なまま一体化が進んで組み立て易くなっているパーツなどは従来通りのハイグレードな出来栄えながら、一部には若干のパーティングラインやごくわずかなバリが見られます。加工処理は容易なレベルです。


冒頭に掲げたパッケージ画像が一部損傷していることにお気づきの方も多いかと思われますが、今回のレビューではダメージ品を使用しています。一体成型されたボディ後端がこのように破損していました。幸い綺麗に折れていたので修復出来たのですが、パーツ成形については従来よりも進歩している分、パッケージ内部での保全や養生に関しては初期製品の方が気を使っていたかな……というのが最近のMENGに関するひとつの危惧なのです。


説明書の指示に従い車体フレームから組み立てていきます。基本となるフレームパーツがきっちり一体成型され、各補機類の接着面も広く取られているので実にスムーズに進んでいきます。


フレームの内側、完成すればまったく見えなくなる箇所までこのディティールです。そのむかしは「ソ連の新兵器」といえばピンボケのモノクロ写真とやたらに驚異を煽り立てる米国防総省発表イラストばかりだったころとは雲泥の差の情報量で、良い時代になったものです(遠い目)


フレーム側面には燃料用(ですよね?)タンクが備わっていますが、


タンク下面はこのように防護されます。一体化が進んだ設計とはいえ機能性を理解できるような分割が成されているのは組み立て過程を楽しい時間にしてくれますね。これ装甲板なのかな。


前後のサスペンションも軍用車に似つかわしい頑丈そうな機構です。ジャンル的にはミリタリーモデルに属するプラモデルですけれど、カーモデラー諸氏のご意見を聞きたくなる。ふと思い出したのですがむかしのAM誌で連載してた石川雄一氏の軍用オフロード車両の実車解説記事は面白かったのです。ロシア車両もよく取り上げられていましたね。


インパネのメーター類はデカールを貼ってみました。


車内装備品ではトランスミッション部分に布製(?)のカバーが巻かれてサイドポケットまで在るのが興味を引きますが、それよりも操縦室と兵員室での椅子の格差社会が気になるところです(w


後部兵員室の内部には迷彩デカールを貼っていきます。大面積、折り曲げありの作業ですがデカール自体が強い材質なので比較的安心して進められる過程です。美しく印刷された迷彩パターンが実に細かいものなので、多少ずれても全然気がつかないところはステキだ!


戦闘室の最後列は互い違いにシートが設置されています。ひとりは後方警戒・下車戦闘を担当し、もうひとりはステップに立って火器操作か車内で弾薬補充とか、なにがしか役割の違いがあるのだろうな。またこのGAZ-2330系列車両にもいろいろバリエーションがあり、戦闘室座席配置が向かい合わせのベンチシートになってるタイプも存在します。


車内に屹立するグレネード予備弾倉の存在感と、その脇に申し訳程度にぶら下がってる消火器のギャップがちょっと面白いところです。


シャーシー部分、前方から。エンジンが無いのは従来通りの処理ですけれど、ボディと一体化されてるボンネットのしたにはちゃんと空間が存在します。ディティールアップの余地、と言えますでしょうか。キット解説によればカミンズのエンジン積んでるそうですが。


天井部分にも迷彩デカールを貼っていきます。しかしこれって一体どんな意味合いがあるんだろう?「内部の迷彩はデカールで再現」とはじめてメーカーからのアナウンスを見たときは何かの間違いかと思ったもので、しかし実際その通りタイガー装甲車の車体内部は迷彩が施されています。軍用のみならずyoutubeで動画を見た内務省治安部隊OMONの所属車両も同様の処置がされてました。でも車体の外装は真っ白だったんですよその車両……


なにか防弾繊維的な内張りなのか「その方が格好良いからだ」なのか、どちらにせよ本車と本キットのユニークな特徴であることに変わりはありません。デカール貼った上からプラパーツを接着するのはおっかない行為ですが、車内灯の多さに居住性の高さを教えられたりで、自分が従来持っていたロシア製車両のイメージとは一線を画すような存在となりました。


ちょっと色気を出して尾灯を塗り分けてみました。多少のはみ出しはボディフレームが隠してくれる、実に作り手の立場を意識したパーツ構成で、

楽しい!!! ✌('ω'✌ )三✌('ω')✌三( ✌'ω')✌


フロントグリルはエッチングを使用します。MENGというと「なんでもプラ」な印象があるかも知れませんが、必要な部分は適材適所でマルチマテリアルな設計がされています。でそのエッチングなんですがボディとA16パーツで挟む構造になっていて、何もしなくても自然と曲線に加工されます。ここはなんか、声出して驚いたぞ。


ボディとシャーシーの接合は良好で、よく「吸い付くようにはまる」といいますがもっとこー

 ス ポ ン ! 

と、マンガの描き文字で効果音入れたくなるほど自然に位置が決まります。位置決めと言えば以前AMX-30のときはいささか位置が取りづらかったOVMの取り付けもぴったり決まる良好なものです。そして21世紀になってもロシアの車両は斧がチャームポイントである。



ドア関係、裏表から。軍用車両らしいゴツイ作りは普通ですけれど、

内張りやポケット部分が別パーツなフロントドアはともかく、リアとルーフの扉は相当の厚みがあるパーツをなんのヒケもなく一発抜きしてあります。これちょっと他で見た覚えのない処置で、相当の技術力が要りそうです。輪切りにして断面を見たかったけどさすがに自粛(^^;


その他車外装備を取り付けて完成。この手の装輪車両だと普通は何かのお供と考えそうなものですが、小型トラック並みのボディと高く伸びたアンテナで形成されるシルエットは本車一両でも十分主役を張れそうなボリュームです。実際映画やゲームでも活躍しているそうですね(あまり詳しくないのが申し訳ない)


若干ドアの建てつけが悪いのは木工ボンドの仮留めで撮影してるからで、プラセメントでがっちり接着すればもっとぴったりはまるでしょう。ドアのヒンジはパーツ化されてないんで本来はそうすべきなんですけれど、車体内部が見えなくなるのはいささか残念でここは悩みどころです。


すべてのMENG製品を見てきているわけではないですが、当ブログで取り上げる度に品質が向上しているのは実感として受けとれます。今回のタイガー装甲車を組んでいる間は、まるでタミヤの製品を作っている時のような感触を受けました。皮膚感覚的というか、言葉ではなくてね。


ところでこの四面画像を作成して初めて気が付いたんだけどいつのまにか左のウインカーが無い。ど、どこで落とした…orz



フロントのステアリングとリア部のスペアタイア取り付けフレームはキット素組みのままでも可動します。


ルーフドアの取り付けは相当タイトで気になったのはここぐらいかな?“ペチェネグ”ことPK機関銃とAGS-17自動擲弾銃が付属します。武装や装備はバリエーションいろいろ在りそうで資料に関しては刊行書籍よりWEBに多く在りそうでね、原語で検索すればもっといろいろ出てくるかと試しにキリル文字「тигр」で画像検索してみたら結果はとんだ動物園である。


これまでのロシア軍車両にない垢ぬけた外見で、新しくファンになってくれる人も多いんじゃないでしょうか。その分従来の東側車両の「垢ぬけ無さ」を愛する人の反応は少し気になるところですが。

MENGの次回製品は同じく現用ロシア軍のT-90Aですが、個人的にはルノーFTが気になるところ大であります。きっとMENGモデルの社内選挙では「ロシア派閥」「フランス党」「そんなことよりブルドーザー組合」などが水面下で死闘を繰り広げているのだろうなァ…

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