双葉社「機動戦士ガンダムAGE メカニック&ワールド」

双葉社グレートメカニックスペシャルシリーズ、ガンダムAGE本です。
従来からこのフォーマットのシリーズはメカ関連設定画稿の掲載数が多いことで定評がありますが、今回は「&ワールド」の言葉通り、メカ設定のみならずキャラクターシート、TVアニメ各話のストーリーダイジェストまでAGE三世代「百年に渡る長き戦い」のすべてを収めた内容の濃い一冊となっています。

AGE1からはじまる全てのガンダム、地球連邦とヴェイガンのモビルスーツをカラー画稿で掲載していることは今更言うまでもなく当然のことで、画面上では正確なディティールが把握し辛かったシリーズ後半に登場する両軍艦艇のデザイン・カラーリングの違いを自由に見て取ることも出来ます。


モノクロページでは各機体の決定稿だけでなく、担当デザイナーの手によるディティールアップ画稿やラフ段階のスケッチが収録されているのもこのシリーズの安定したフォーマット。ドラドLの頭部形状が一般機体と異なっていたとは、恥ずかしながらこの本読むまで気がつかなかった……ちゃんと本編作画でも変えてたんですねえ。と、このように本編映像だけでは見落としがちな新しい発見も多くあることでしょう。


コックピットの内部資料からも地球連邦とヴェイガン双方の技術基盤の違いだけでなく、世代を重ねるごとに発展していく各ガンダム(と連邦軍MS)に比べて全世代共通のままなヴェイガンMSは実は進歩が止まっていたのではないか…と世界設定についての広がりを感じさせられるものです。中身は同じでも外観はどんどん奇形的な方向に発展していったヴェイガンの機体は「MSの恐竜的進化」と呼ばれるのに相応しい存在か。

などと言いつつ何処にも発展せずに終わったAGE3の複座コックピット画稿を載せるのはワタシがゼーガ信者だからだ。たった2回の使用で捨てるのは勿体ない設定だよなーこれー。


デザイン原案のラフスケッチとデザイナーズインタビューはグレメカ別冊ならではの内容でしょう。こういうものを掲載してくれる媒体が最近は本当に減ってしまったように思います。プラモデルでのオリジナルな改造や自作のきっかけとなるアイデアが多く含まれているので、昔はよく模型雑誌に載ってたものですけれど。


AGEシリーズ最大の特徴としてはTVアニメと連動して製作されたゲームの存在が挙げられるでしょう。サイズこそ小さいもののPSPゲーム内に登場した全てのガンダムウェアとヴェイガンMSのデザイン画稿がフルカラーで収録されています。劇中未登場で名称不明の機体もあるのか。ゲームオリジナルの武装はバラエティに富んだもので、こつちの世界線ではAGEシステムさんも真面目に働いてるようで。


製作発表当時から議論百出だったキャラクターに関しても、決定稿だけではなくレベルファイブから提示されたデザイン原案とキャラデザイナーインタビューと従来このシリーズに無いような濃い内容で掲載されています。スキャン画像が薄いのは単に機械的な問題で、決してこのひとたちの影が薄いとかそもそも誰だっけとかそういうことでは多分ないぞ。だいたいブリッジオペレーターを三世代ごとに新規造型するのってすっごい大変な作業だと思ふ……


設定本ではあるけれど読み応えがあるのは活字パート、特に現場の生の声が聞けるインタビューのページだと思われます。特にAGEの場合は作品的に大成功したとはやっぱり言い難いので、シリーズ構成日野社長と山口監督の対談からもそこらへんの事情がなんとな〜く伺えて、読み方としてはあまりよい態度ではないのですが、やっぱり人間下世話な視点も捨てられない生き物でしてエデンは遠いな。


没になったアイデアはかなり面白そうなものが存在します。初代ガンダムから逆襲のシャアまでの流れを今風な味付けでやり直そうというシリーズ構成には合致しなかったかもしれませんが、たとえばプラモデル方面ならもっとこういう発想を拾えるはずでね。小林誠風とか近藤和久風とかあっていいよなってそれも大概旧世代の発想ですね。


書籍の記述内容に立ち戻りますとこの本「ヴァイガンギアは全てのヴェイガンMSの始祖」とか「シリーズ開始当初の地球連邦軍MSはそもそもモビルスーツじゃなかった」など本編ではまったく語られることのなかった驚くべき話がバンバン出てくるのですが、必ずしもそれが公式と言う訳で無し、ほかのページではごく普通にジェノアスをモビルスーツって解説してるしでいろいろとこう、フワフワした内容でもあり(笑)


しかし、考えてみればAGEの世界は公式設定で百年以上の期間と火星圏までの領域という時間も空間も非常に幅広い範囲を扱いながら、大部分が空白の余地として残されているのはガンダム作品として稀有な立場を占めているのも事実ですし、再編集新作ビデオ「MEMORYS OF EDEN」の発売やそれに合わせたガンダムフロントでのガンプラコンテストでの、なにかネタ本として、あらためて読まれてもよいかと。


アデル系なんかもっといろいろ出来そうな気もするのですが、電撃やHJのMSV連載(そっちの機体は載ってませねそういえば)でもガンダムメインであんまりこの辺の量産機は扱われて無かったような。あまり言及されないことですがガンダムAGEの特徴としては公式から逸脱してもだれにも怒られないと言う素晴らしい利点がありますので、多方面での進化と発展を図って行きたいものであります。


うん、まあ、いや、たぶんね。やりすぎるとやっぱり怒られるかも知れないけどね。


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