角川書店「吉崎観音 ワールド 1988-2013」

今年、2013年はケロロ軍曹誕生15周年であります、それを記念して刊行された吉崎観音の著作を集大成した作品集なのであります。

私的な話で恐縮なのでありますが、私がはじめてこの愛すべきカエル型侵略宇宙人と出会ったのは「宇宙X兵衛」と共演していたなにか番外編的な作品でした。いまでもよく覚えているのですが冒頭の会話がえらく強烈な印象で……そう、たしかこんなんだ


「ぐんそー、いま何作ってんの?」
「ニコイチ」


ああこのマンガは読まなきゃいけねーよなと、コンビニの店頭で強く思ったのでした(立ち読みかよ)


あれからずいぶん経ちまして、7年間の長期に渡って放送されたTVシリーズも終了して久しいのですが、ケロン小隊の皆を始め多くのキャラクターたちは今も変わらず大勢のファンから親しまれています。本書ではそれらキャラクターによる一連の吉崎観音作品やイラストレーションなどを、十分堪能できる内容となっています。


マスコットキャラクターだけではなく人物、特に女性キャラのイラストも多く収録されています。人体はシンプルな描線で構成し、コスチュームやパーツ類にはディティールを盛り増して視線誘導を図るような処置は吉崎キャラの特徴と言えるでしょう。脚がね、可愛いのですよ。藤子不二雄の手法とイマドキのラインを混ぜ込んだようなスタイル。と言ってしまって良いのでしょうか、清潔感のあるエロスというか……

あとこの人の絵柄には「ショタ属性」が重きを置かれていると考えるのですが、その方面については全く知識と情報が欠落しているのでそこは紳士淑女の方々に委ねたい。


長年見慣れてきたケロロ軍曹の姿も読み切りのパイロット版(左)や連載初期の絵柄(右)では、現在とはいささか異なる外見です。単行本を揃えている方には自明の理でありましょうが、そこにはやはり形態学的な洗練化のプロセスを見て取ることが出来ます。


90年代末からゼロ年代初頭に掛けてはホビー業界での浸透も多く、立体化やイラストなどをさまざまなところで目にしました。中でもとりわけ大きな業績として人々の心に留まるのはカトキハジメによるリファインの作業過程をわかりやすく視覚化したことではあるまいか。ガンプラマスターグレードHGUCってのはつまりこーゆーことなんだよと、誰でも納得できるマンガによる解説(笑)


その他ゲーム関連、アニメなどでもちょっと懐かしいタイトルがいくつも出てきます。最近はアニメ作品の第一線には携わっていないのでしょうか、あまり目にすることが無いようにも思うのですがはて。


ガンダムカードビルダーのキャラはコスプレ方面で受けがよく、いまでもイベントなどでは目にするような。女性でも抵抗の無いデザインラインだと、そういうことなのかなー。


モノクロページでは単行本未収録の読み切り作品が3本掲載されています。デビュー当時のエピソードを語るインタビュー、略年表も興味深いところではありますが、「週刊少年サンデーで連載中の克・亜樹のアシスタントを務める」ってひょっとして「はっぴい直前」でしょうか?あれ結構好きだったんですけど(昭和臭)


3本の作品のなかでもとりわけ注目すべきは、ナスカの地上絵と地球の滅亡をネタにした美少女コメディー「2021」でしょう。(本書では加筆修正されVersion2012として収録されています)いわゆるボーイミーツガールものでありがちな展開ではあるのですが、オカルト趣味や滅亡論などケロロ軍曹と共通するテーマやガジェットが多いのは、実はこの作品が読み切り版「ケロロぐんそー」と並んで連載検討作品として描かれた同時期のプロトタイプであるからです。ご存じの通り連載作品として選ばれた「ケロロ軍曹」を制式採用されたゲルググに例えるならば、読み切り一作で使命を終えたこの「2021」は

ギャンである。

なお本作のヒロイン「ナスカ」は後に「超劇場版ケロロ軍曹3」にゲストキャラとして登場しました。なんかいい話だよな。


もしもその(言ってしまえば)ありきたりな落ち物ヒロインマンガが連載に選ばれていれば、15年に渡って幅広い層から支持を得るキャラクターには成りえなかったかも知れません。それを考えると当時の角川書店コミックエース編集部の英断に感謝するべきなのでしょうね。アニメは終わって久しいのですが、この愛すべき侵略宇宙人たちはいまでも我々の隣に生息し続け、


被災地復興支援にも大活躍しているのです。


スタッフ、キャストの皆様、そしてケロロ軍曹生みの親の吉崎観音氏にいまいちど最敬礼であります∠(`・ω・´)


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