トイズプレス「モアベストオブ FSS」

「ベストオブ FSS」につづく「ファイブスター物語」名場面集第二弾です。

「マンガに副読本は必要か?」の是非は問われて然るべき命題でありましょうが、永野護の「ファイブスター物語」は志郎正宗の「アップルシード」と並んでほぼ同時期に、この問いかけに明快な答えを出しています。この二作品は非常に似通っていて、どちらも魅力的なキャラクターやメカニックが満載で、どちらも作品世界に膨大な背景設定があり、どちらもコマの隅々まで情報量に溢れた描き込みがされていました。


…そしてどちらも話が途中でストップした(ノ∀`)


などと、嘆いていたのも今は昔のお話です。「ゴティックメード」も無事完成してなんと今春、4月発売のニュータイプ5月号より漸くに「ファイブスター物語」連載再開なのです!(今月発売のNT誌4月号には事前特集が掲載されます)嘘じゃないかしら?いえ本当です!いつまで続くのでしょうか?そんなことは知りません!


そんなお祭りのタイミングなのでちょっと前に出た(2009年発行)この本を、いまこの時期にご紹介。


前作「ベストオブFSS」と同様に、構成の要となるのは多くのFSSファン…というより業界関係者の選んだ個人的なベストシーンの数々です。長期に渡って執筆されて来たFSSの持つ様々な魅力が、選者それぞれの異なる立場から語られる様は興味深いところ。それにしても魔導大戦開始以来キャラクターの世代交代が進んだ割にはオッサン率の高いセレクト集だナーと不思議に思って読み進めていたら、


なんのことはない、選んでる方々も安定してオッサン率が高いのでした(笑)連載始まった頃は永野センセもまだ27歳のロック兄ちゃん(自称)であったのに、時の経つのは早いものですな。「ナイト・オブ・ゴールドは時間そのものをエネルギー源にしている」ってこういう意味だったんですね!違うと思います!!


今回はいわば「メカ編」というべき内容で、星団史に名を残したり残さなかったりするモーターヘッド各騎の名場面が大量に掲載されています。FSSガレージキット全盛期の頃はこのようなひとコマやトイズプレス刊「キャラクターズ」などの資料集からいくつものキットが製作されたものでしたって自分のセレクトもオッサンくさいシーンばっかりジャン!


単行本(第8巻掲載分)では大幅にカットされたゴーズ騎士団のブラッドテンプルや、わずかひとコマしか搭乗してないベルゲサイレンなどマイナー機体も漏らさず採録。ノイエ・シルチス騎士団のサイレンやバッシュ・ザ・ブラックナイトなど長期間に渡って活躍の多いメジャーな機体は年代ごとの擬装変化を一瞥に観察できるなど、ただ単行本のページをめくっているだけではなかなか見えてこない魅力が判り易く提示されます。


なかでもとりわけ単行本4巻や12巻で大活躍のアシュラテンプルはワークショップ・キャストの生嶋毅彦氏の解説と共に大幅にページが割かれています。同社の1/100アシュラテンプル01は実にFSSキット史上に残る傑作でした。


カステポーにおけるアシュラvsプルートの対決はFSS全編を通じても一、二を争うほどのロボットバトルの迫力を魅せたページではないでしょうか。一対一の戦いでは実力差があり過ぎて一太刀・ひとコマで決まるような殺陣が多い中、両者伯仲する力の激突とドラゴントゥースの意外性とで、この一連のシーンは特に際立った内容です。


なんでプルートってキット化されなかったんですかね。こんなにカッコイイのに……


モーターヘッドに限らず宇宙船やディグ、女性の脚やさまざまなミリタリズムなど作品全体にあふれるフェティシズムを様々な角度から検証できる総集編でもあり、そうだよFSSってフェチっぽいマンガなんだよな全体的にな。


フェティシズムとメガロマニアが突き抜け過ぎたフロートテンプルをはじめとする各国王宮とならべてみると、ユーバー大公が常識的な人物に見えてくるから不思議なものです。考えてみれば彼の人こそFSS(フトモモ・スリスリ)の鑑的人物ではなかろうか。神様相手にセクハラですよすごいよユーバー大公。


と、連載再開に併せて新規読者層・入門者向けの副読本として紹介できないかとこの本を取り上げたのですけれど、どうやったって古い話になっちまうんだよなあ…すいませんねひとり同窓会みたいでしてね。


浜松町の都産貿に徹夜で並んで海洋堂のマグロウ買ったりしてたからねえ、これはもう仕方がない。自分にも少しはそんな血が流れているのですよ。


にほんブログ村 その他趣味ブログ 模型へ







ところでだな、自分はこの本にも「ベストオブFSS」にも実は一点不満がある。なぜこれだけ多くのギョーカイ人が集まりながらFSS屈指の「あの」名場面がセレクトされていないのか。これは大いに文句を言って然るべき筋合いであろう。よって手持ちの単行本から画像をスキャンして「モアベストオブFSS」にも載っていない名シーンを紹介してみます。なんて勝手な!まーでもFSSって以前はNT誌面に「読者が抱いた疑問に読者が答えてそれを原作者が採点する」なんだかよくわからないコーナーまであったことだしでいろいろフランクなんだよいや多分。


微妙に避けて通られることも多い話題でありますが、ファイブスターと言えばやはり星団最強って誰よと、この論議に尽きると思う。身の回りのFSS古参兵にたずねてみれば、きっと複雑な表情を浮かべながら「…川村万○亜じゃないかな」などと意味のわからない返答が返って来ることでしょう。でも、そんなことはありません。ファイブスター物語における星団最強の存在と言えばそれは勿論、


超帝國ファロスディー・カナーン炎の女皇帝の直系子孫にして「純血の騎士」、騎士の力とダイバーパワーを併せ持つハイブリッドヒューマン、かつてはミラージュ騎士団No.1の地位を占め剣聖ディモス・ハイアラキの全ての剣技を受け継ぎプロトタイプ・ナイトオブゴールド「シュペルター」を駆るシルバーナイト、カステポー・ナイトギルド総評議長ヒッター子爵の別名も持つハスハ・ミノグシア連合AP騎士団総隊長、剣聖ダグラス・カイエン!を、


無造作に放り投げたバル=バラと適当に埋設された地雷の雑なコンボで危うく殺しかけたミハイル・レスターこそ最強ではないだろうか。危ないところだった、アウクソーが庇わなかったらその後の歴史が大幅に変わるところだった。Anotherなら死んでた。


このシーンって初見だとアウクソーの悲劇性が高い場面なんだけど、後にカイエンの設定が公開されるに従ってどんどんギャグじみて見えるという一種迷場面でもあります。「カイエン手抜き過ぎ」って言うけどさあ、実はレスターが強いんですよきっと。特に格ゲーじみた必殺技なんか使うことなく懐園剣叩き落としてますし。


でもそんなレスターさんもすぐ死んじゃうのがFSSであります。「無職で死んだひとですねプゲラ」とか言うなよ!自由人だよ!