ファインモールド「1/35 ガールズ & パンツァー:三式中戦車 チヌ 」

ガールズ&パンツァー」プラモデルシリーズのいわば「二期」トップバッター、ファインモールド三式中戦車「チヌ」で戦車道全国大会決勝戦に彗星のように現れ流星のように消えていった大洗女子アリクイさんチームver.です。

キットパーツは従来からある三式中戦車の成形色変えです。思えばこのキットはファインモールドが本格的に自社開発・流通に乗り出した時のアイテムで、たしかホビーショーにブース出展するようになったのも三式中戦車リリースのタイミングだったかと。ちょうど自分がこの業界に足踏み入れた時期であり、いろいろ思い入れが深いプラモデルです。


リリース前にAM誌で開発経過が報じられていた頃は「こんなマイナーな戦車のプラモデルが売れるんだろうか?」と(当時は海外向けメインだったのもあって)疑問に感じたこともありましたが、いざ発売されるや大変な売れ行きで、モノがしっかりしていれば市場はちゃんと受け入れるものなんだなーと教えられた覚えが。あれからずいぶん経ちましたが、こうしてまた話題に上るのはなんというかその、感慨深いものですよいろいろと。


転輪関係Bパーツは同じものが2枚入ってます。ファインモールドの日本戦車プラモではいちばんよく見る部品です(笑)


砲塔関連です。なおカラーリングはクレオスの陸上自衛隊戦車特色セットに含まれる濃緑色が指定されていて、土浦の陸上自衛隊武器学校に保存されている実車がイメージソースのようですね。「昭和自衛隊」風味でもあって、以前モリナガ・ヨウ氏がAMに描いてた「61式車体に三式砲塔乗せた戦車」を思い出したりだ。


キャタピラはベルト式。そういえば従来は連結式しかやってなかった同社としては初のベルトキャタピラ方式のキットでした。それだけ一般ユーザー層への浸透を見越した設計開発だったんだろうなあ。実際、このプラモデルで日本戦車ファンの門戸を叩いた方も多かったことと思います。


防弾ガラスやライトレンズはクリアーパーツ。今でこそごく一般的に見られる構成ですが当時はそれなりに画期的、同時期にタミヤはM8グレイハウンド装甲車、ドラゴンはSU-100なんかを出してた頃ですね(1998年10月)

デカールは(一時期公式サイトでも「ネトゲチーム」と誤表記されていた)アリクイさんチームの三人と、車体発見時/決勝戦出場時の2種類のマーキングが付属します。中古戦車販売店「ブラックデューク」(笑)のチラシなど、ぶら下げるタイプのデカールには説明書にプラ板切り出し用の型紙が用意されています。


以前三式砲戦車を組んだ時にはサスペンションアームに大きなヒケが見られたのですが、今回は改善されていました。ちょっとこのタイミングでかどうかはともかく、メーカー側が丁寧に金型をメンテナンスしている様が伺えてたいへん好印象であります(^^)


成形色が変わったことで各部のディティールが通常版よりはっきり見えるようにも思えます。いや単に久しぶりに古い友人に会うと妙にキラキラして見えるとか、そーゆー心理的効果かも知れませぬが。


古参兵の方々はともかく、本キットで初めてファインモールド製品を組まれる方々に対してはこのBランナーのタグ裏にディティールアップ用のリベットが存在しますので、うっかり捨ててしまわないよう申し添えておきます。


ではここから各ステップごとに組んでみて、各段階での注意点など挙げていこうと思います。むかしから好評を持って迎えられた製品でキットレビュー記事も数多く、果たして今更やる意味があるかどうかは…あると思います。今だからこそ、ですね。幸いこのブログには字数制限も版下配置も関係無いので商業雑誌よりも全然好き勝手にやれるのだ(w



・STEP1

足回りを組むのはあんまり楽しい過程じゃないですが、テンションの高い最初のうちに済ませてしまう方が吉です。B3・B4の起動輪はやや組みつけに遊びがありますので刃先を揃えましょう。この際ベルトキャタピラを巻きつければ極めて簡単に左右が整います。対してB1・B2の誘導輪は左右の軽め穴が揃わないのが正しい位置関係なので、ここはガイドに従って合わせます。

 (※AM3月号の記事はこの箇所を誤って組んでます。自分にも覚えがあるので鬼の首取ったようなことは言わないよ)

あとは懸架バネパーツB37はゲート処理をきちんとしておきましょうとか、接続アームB20のバリに注意とかですね(B20については後述します)


・STEP2

車体上部のゲート痕はかなりゴッツいので丁寧に処理しましょう。太いからと言って切り出しに無駄な力を掛けると怪我のもと、その点にご注意です。またカッターの刃を立ててパーツの全周を一度「カンナ掛け」して、小さなマクレや直線の整ってないところを処理しましょう。


裏面に接着するA33・A34はやはり組みつけに遊びがありますので、ここはパーツ後端が揃う位置で取り付けます。考えてみれば本キットの設計当時ってまだ業界にCAD導入されてなかったんだよなあ。タミヤのリニューアル版「信濃」が3次元CADのデータを広告宣伝に使ってたのはインパクトがありましたが…


・STEP3

車体上下と正面装甲の取り付けです。この工程には特にポイントは無いのですが、


STEP2でパーツ取り付け位置をミスるとこの箇所が干渉しちゃいます。ええ、一度ミスって直したから実によくわかるのですよ。


余談。三式中戦車チヌは太平洋戦争末期に生産ライン上にあった一式中戦車チヘの車体を急遽改造して生まれた車両です。ファインモールドのキットはこの点をよく再現していて、溶接で塞がれた機銃手ハッチ痕や拡大化された砲塔リングを補強する天板など、このプラモデルで様々な事を学べました。いやはや、なにもかもみななつかしい。

ところでガルパン世界の歴史って太平洋戦争とかどんなふうに推移したんでしょう?もしも戦争のない世界観だったらそもそも三式中戦車って生まれて来ないんだよなーと、それは考えない方が幸せですかそうですか。


・STEP4

サスペンションアームの取り付けです。左右のパーツを組み間違えないようにしましょう。またこの工程では懸架ばねをサスペンションアームB35・B36にはめ込むのですが、コの字型の継ぎ手にバリが発生していて実に処理しづらいです。


いっそのことコの字の内側にあるとりつけピンも削り飛ばしてしまった方がサスアームとの接続も良好になります(ビフォー → アフター)あまり無理に力入れると二本ある細い部分にテンションかかりますから、ここはB20を接着しちゃって構わないでしょう。幸いサス自体も非可動でありますし。


・STEP5

転輪関係の取り付けです。起動輪はじめ下部の転輪は例によって木工ボンドで仮止めだ。部分塗装派なものでして自分。


STEP6

車体前面装備品、操縦席の防弾ガラスや前照灯のレンズは本来この段階で取り付けますが、塗装後に回した方が無難でありましょう。また機関銃カバーは本体色とは別に黒染めされていますので、車外装備品と同様の扱いで済ませたほうが何かとスムーズではあります。接着したのは主に見栄え優先なのです(笑)


・STEP7、8、9


STEP7のマフラー部分に関してはB18のバリが目立つので処理しておきましょう。またジャッキ台A10・A11は本体に接続しながら合わせるとよいかと思います(日本語が変ですが実際に現物を見れば自然とそうなります)

車外装備品関連は全部仮止めにしています。「全部接着してからあとで塗り分けろ」とどんな関連書籍でも言われていて、実はおおむねその言は正しい。ハミ出しを恐れて部分塗装のち接着よりも、ハミ出してもそれを修正していくことで自分自身の腕前も向上するものです。技術って階段だ。


……いまさら手遅れです(ノ∀`)

なおパーツNo.A26の雑具箱はアニメ本編では未装備なのですが、それを再現するには割と大きめの接着ガイドを削ってフェンダー上を均一にしなきゃいけない。「購入希望者の裾野が広いので出来るだけ加工指示は排除したい」とファインモールド公式ツイッターに表明されていますばう。どうするかはユーザー任せであるわけですが、個人的には「あったほうが便利ジャン!」とゆー、身も蓋もないけど箱はある理由にて乗せているのだ。

あとまあ、「アニメの設定資料はあくまでアニメーターに描き易くするために存在する物なので、それが『実物通り』かどうかは別の話である」などと80年代後半の模型雑誌を読み込んできた層にはワカッテモラエルジャロカ…なテーゼもあるのです。楽しんで楽をするのです……


※うっかり書き忘れてましたけれど、フェンダー上のジャッキは差し込み口を開口してます。このレビューじゃどこもいじらないまま素組で提示するつもりだったんだけど、こないだドラゴンのアレ見ちゃったからねえ、手が勝手に動いてました(w;


・STEP10

車体後部装備品の取り付けです。B30の取り付けピンをゲートと一緒に処理しないよう要注意だ。なんだか「製作上のポイント」じゃなくて「自分のヘマ」を列挙している気分なんだぜ(白目)

ところで本キットには牽引ワイヤーが付属していないので「あったほうが便利ジャン!」と思うならどっかからチョイスすべきなんでしょうが、ちょいと思いつきません。無線機アンテナの基部は一式中戦車のパーツがまんま使えるのですが(とはいえガルパン世界は軍用車載無線機より女子高生のガラケーの方がよっぽど交信能力が高そうなので、アンテナがそのものがイラネーのかもしんない)


またこれは定番加工ですが、B24などの小さな手すりパーツは本体に接着してからゲートを処理した方が楽ですね。


・STEP11、12、13

ここからは砲塔のターン!主砲は合わせ目処理を丁寧にやりましょう。スムーズに主砲の上下可動やるならC6は丁寧に処理して、あまり拘らないならそのままで。


・STEP14

キューポラのパーツB22はパーティングラインが強く、目立つ位置でもありますのでしっかり処理します。内部には防弾ガラスも付属でハッチ閉じたまま仕上げる方も実は接着しておいた方がよいのです。


・STEP15

砲塔本体の組み立てです。A20のパーティングライン処理はB22と同様(とはいえ丁寧にやってないのが色々バレる画像で気まずいww)C33はじめ小パーツはケガキ線にそって置いていく作業となります。こういう場合はまず少量の流し込み接着剤を塗布し、その上に小パーツを乗せ位置決めし、位置が決まったら再度接着剤を流し込む。そんな手順で進めます。


・STEP16

砲塔の完成です。「あのアホ毛みたいな部品って何?」と聞かれてそれが対空機銃架だということにしばらく気がつかなかった。新しい観点って素敵ですわあ。

・STEP17

砲塔乗せてキャタピラ巻いたら完成です。本編映像でもキャタピラの垂れ下がりは印象的でしたからティッシュを使って転輪に接着したり真鍮線使って押さえるなり、なにか工夫はしたいところ。別メーカーのオプションパーツ使うのも手っ取り早い解決法ですけれども。


「ヒトツちゃんとしたの作ればプラモは量産できるということだ」とはモデルカステン創業者、現アートボックス社長の市村弘氏の言葉ですが、このキットを組んでいてそのことを強く意識しました。ファインモールドが1998年にちゃんとしたものを作っていたからこそ、十数年経って「ガールズ&パンツアー」の製品として再パッケージが出来る。いまの戦車模型ブームを「便乗」という人もいましょうが、むしろこれまでにちゃんと「土壌」を構築してきたからこその、アニメが乗っかれる余地もあったわけですね。


うん、だからワンフェスタミヤブースをヤユしたように書いたのは正直スマンかった。ちょっと反省している。具体的に言うと九四式軽装甲車の正面装甲厚ぐらいの幅で反省している(8ミリ)


ここからはディティールアップのポイントなどを挙げてみます。


最終減速機カバーのリベットが省略されていますので、Bランナータグ裏のリベットはここで使いましょう。フェンダー前端内側も、割に目立つ省略です。資料はいろいろありますが関東地方お住まいの方は土浦の陸上自衛隊武器学校で実物見てくるのもお勧めです。例年ですと4月上旬には一般公開イベントもありますので、今年はガルパンファンが大勢詣でそうな気配(笑)


キューポラの周囲には前方向以外に5カ所の視察スリットが存在します。これを再現する際の位置決めに防弾ガラスのパーツが大事な役割を果たすわけですな。ウェーブのグリップのこには一定の高さでケガキ線を引く為のアタッチメントがあって便利らしいのですけれど、既に絶版ですしプラ板で適切な治具を作ればそれで十分、一生涯利用可能だと思うぞ。


車体左右の袖部前方には一応スリットのモールドが存在しますが塗装すると消えるレベルなのでここは深めておきましょう、キューポラの場合もそうなのですが位置はともかくサイズは多少大きめに彫って埋めて調整したほうが何かとやり易いハズです。


モデルグラフィックスガルパンコンテスト締切まであと2週間、このキットだったら今から組み立てても間に合うかもしれませんね。全身像のデカールはともかくバストアップのヤツはどう使えばいいんだろうと、ちょっとスキャン画像を雑に貼っただけで申し訳ないけれど本編でもよく見た「カットイン」風演出で。サンダース戦でバレー部一同がブッ飛ばされるシーンでの演出は実によかったのでみんなコマ送りで見るのだ。


と、こんな感じでしたネトゲ戦車。例えば現役時代の大洗女子参号車であるとか、「もしもグローリアーナ戦時に参加していたら」などのIF設定を積み重ねてみても面白いかもしれないです。

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えっ、まだ見せてないもんがあるだろうって?

うん、まーありますけどね。でもあれって見せてよいものなんですか??

ファインモールドのサイトでも一部且つ「SAMPLE」の大文字重ねて某サイトさんでもデカールで隠していて。

そう、今月23日に第2巻発売となるコミック版「ガールズ&パンツアー」作者の才谷屋龍一さんによる三式中戦車解説マンガがこのキットには載ってるのですよ。

ちなみにフラッパー版のガルパンはTVでは見られなかった対アンツィオ高戦や、秋山殿指揮による臨時チームでのルノーB1運用などまた違った魅力が盛りだくさんです!

しかしなぜこのキット(いや八九式の時もそうだったな)のおまけマンガはネット上で公開されないのか。契約上の問題かはたまた無言の圧力か。

うむ。いかにもそれはケシカラン事態ではあるまいか。我々取材班は表現の自由をお題目に掲げておまけマンガのページをここに完全公開するものであります!!

あ、スキャン画像をそのまま乗せると激重なので、一応サイズを縮小したものとなりますのでご注意。


ほい→ 


2×3ピクセルまで縮小してみた。「完全公開する」とは言ったが「読めるような形で」とはひと言も申し上げていない。ひとつもウソは吐いていない。


こんなんだから「君の物言いは国会答弁に来た官僚みたいだ」とか言われちゃうんだよな(´・ω・`)