ICM「1/35 G4 ドイツ高官用6輪乗用車1939年型」

日本語製品名称からは巧妙に(?)抜け落ちていますが第二次大戦時代のメルセデス・ベンツ製高級乗用車です。実車は57台が製造されパレードなどに活躍しました。

キットはウクライナ・ICM社製です。このG4という車種自体立体化には恵まれていたようで、古くは日本でもプラモデルになってたりしますが流石に昔のものです、現在の技術で設計されたこの模型、凄まじい出来栄えです。





「アイテムは面白いけど出来の方はイマイチ」などというロシア東欧系キットへの評価は過去のものと化して久しいのですが、今回あたらめてICM社の製品を見るにつけてもその技術力には舌を巻くばかり。ミリタリーの枠組みでとらえるよりもカーモデル、ビンテージカーのプラモデルとして考えた方がよいかも知れません正直、いくつかの国内メーカー製品よりもずっとカーモデルしてると思う。安易に金属部品化せずに、ほぼ限界と思えるまでにインジェクションプラスチック成形されていることも驚きなのです。


さすがにハーケンクロイツデカールを附属させるのは限界だったらしいのですが。


フィギュア4体が付属します。このランナーだけ別の袋で組立説明書も「German Staff Personnel」の個別印刷になっている。いつでもバラ売りできそうなフォーマットで、いつバラ売りされてもこれはイケる!というぐらいにこちらも傑作でして…


将官・将校の制服には騎士十字章や参謀飾緒が繊細にモールドされています。ここは美しく塗り分けしたいところでしょう。


頭部の造型も見事なもので、顔見ただけでも誰が偉い人なのか上下関係がすぐ分かる、それが年齢の順とは明らかに違うのだろうと、そこまで目算できる作りです。

…きっと運転手の故郷では残された妻と娘が父親の帰りを待ちわびて(それは妄想だ)


婦人補助部隊隊員はダブルのジャケットにスカート姿なのですが、スカート前面は上体と一体化され、女性の美しいラインを描いています。大変センスの良い造型だと言えましょう、ウクライナの人GJ!ウエストのくびれのボタンまわりのシワがたまらない魅力を醸し出しているッ!!

ところで上掲フィギュアのランナー枠画像をよくよく見ればわかりますが、女性の頭がありません。


((((;゚Д゚))))ヒイィィィ


さいわいランナーからもげてただけで無事ビニールパック内から回収されたのですが、それにしても不憫な状態ではある(つД`)


さて、本来ですとここからおもむろに作っていくところです。実際に手を動かし組み立てて見れば判ることもあり、伝えるべき情報も見出される。ここはそういう場所だと思っております。例え自分の腕前がアレでナニだとはいえ、カタチにして見せることで読者の皆様に何かを判断してもらう、その為のブログである。

ですがね、

これって迂闊に手を出しちゃうと、却って魅力を削いだりしないか…と、この繊細なパーツ群を前にしてちょっと悩んだ。

すまない!そしてすまない!!


…今回は個々のパーツのクローズアップを以てキットレビューとさせていただきます m(_ _)m ペコリ


メインフレームからのびる支持架の類です。


ステアリングホイールも2パーツを使って同心円状の構造を再現。


インパネのモールド。


8気筒エンジン、シリンダー部分。


二軸あるリアアクスルの、完成すると目には見えない部分にモールドあるのもそれはもう、実に自然で。


板バネサスペンションも妥協や省略のない立体化です。
ところでこのベンツG4、後輪四輪駆動でオフロード走行も問題なく出来たそうなんだけど、こんなクルマでオフロード走るのはなんつーか、ドイツ人はすごいな。


さすがにフロントグリルとボンネットのスリット部は抜けてませんが、説明書にはボンネットを分割すればエンジン見せた状態での完成も可能とあります。
いや、ここに刃物入れるのは余程の腕前と自信がないと恐ろしい結果を招くぞ(ガクブル


フロントフェンダーの大きな曲線デザインは同時代的なシルエットですけれど、ここまで見てきただけでもこのプラモデル、単純な直線がどこにもありません。なんと豊かに味わい深いライン取りなんだろう。この感覚はなんだろう。


ドアのカーブを見てね、ようやく思い至りましたよ。“メルセデス”って女の子の名前です。そう、このプラモデルに感じるものはエロスだ (*´д`*)ハァハァ


急にシートの固さを確かめたくなる。固いな(あたりまえだ)


組立説明書からも抜粋してみます。なにか変わったこと、珍しい設計をやってる訳ではありません。むしろここから目にとれるのは実に直球な、オーセンティック・スケールモデルの在り様です。


開発コストや金型の維持、そもそも大型ソフトスキンって売れスジ的にどうなんだろうといった国内メーカーだったら避けて通れない(でしょう?)要素を微塵も感じさせません。実際その辺、こっちが心配になってくるほどで…


完成図がこちらになります。いや〜、技術といいセンスといい、このキットを開発した人は楽しく仕事をやったんだろうなーと、思わずそんなことを考えてしまいますね。近年久しぶりにそんな思いを抱きます、いや、真面目な話。


ただし、

実は一点だけ、このキットには不満がある。足りないものがある。メルセデスベンツの社章さえ何のためらいもなく立体化されているのになぜアレが入っていないのか!

アレだよアレ!



H社の72スケールでは完成見本に不自然な空白のある、あの男だよ!
※ハセガワのミニボックスシリーズ・ベンツG4型にはフィギュア6体が付属します

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