モデルアート「1/700 艦船模型データベース #1」

モデルアート別冊、メーカー各社やシリーズの垣根を越えて広く1/700スケール艦船模型を紹介するガイドブックです。
モデルアート社では古くからこのようなスタイルの艦船模型本がいくつか出版されてきましたが、ここ数年来の艦船模型ブーム・新製品の増加を受けて刊行される今回の別冊では従来にない視点が取り入れられ、「データベース」として機能することを目指している…のはタイトルにも明示されています。



冒頭に置かれた「艦船模型の基礎知識」では各種船舶の専門用語、個々の部品や構造物の機能が的確に説明されています。無論ベテランの艦船モデラー諸氏にとっては釈迦に説法な内容でありましょうが、そのような方々による作例の製作記事を、とりわけ入門者の立場で読むためには基礎知識をわきまえておくことは大事です。


本書内容の中核となる艦船模型データは近年のアイテム数増加に伴い一冊では纏まらないボリュームとなっています。今回の第一巻に収録されているのは
旧日本海軍の戦艦・軽巡洋艦水上機母艦・潜水母艦敷設艦海防艦・砲艦・小艦艇・特務艦艇それぞれのカテゴリーに属するフネです。軽重のバランスを上手く考えた配分であり、派手で目を惹く主力艦と玄人受けするマイナー艦が同列に並んでいる楽しい内容でもあり。


掲載されている写真はキットの完成見本やほぼ素組みに近いもの、そしてすべてのアイテムごとに「設定年代」「初出年」「工作ポイント」が併記されています。特に初出年の表記は重要なデータであろうと思われます。特に歴史の長いウォーターラインシリーズでは新旧のキットがスタイリッシュな共通フォーマットのまま混在しているので、知らずにいると無用のトラブルを招きかねないことも。


トミーテックの技MIX地上走行模型シリーズやニチモ1/700の戦艦大和といった珍品が紹介されているのもユニークなところです。入門者への配慮を欠かさないまま濃い目のアイテムも抜け目なく紹介しているのは老舗のモデルアートならではの手腕でしょうか。


リメイクやリテイクが進んだ大型艦に比べると軽巡洋艦はまだまだ70年代の開発アイテムが現役だったり。とはいえ90年代にフジミの抜けた穴をタミヤが新規開発で埋め、さらに昨年フジミ自身がリメイクした「五十鈴」に見られるように新陳代謝は進んでいます。


艦船模型のバリエーション展開も以前は同型艦による派生を指向することが多かったように思いますが、現在では同一艦の年代別による艤装内容の変化を見せる製品が増えたように見受けられます。それだけ資料が充実し、より一層質の高いキット内容が求められる昨今の事情も垣間見る事が出来ます。


一時期艦船模型が停滞していた頃に一社気を吐いていたピットロード、掃海艇のインジェクションキットやレジンによる各種マイナー艦艇など、90年代にはお世話になった方も多いでしょう。


アクセサリー類に同梱されている小型艦艇やシールズモデルの独壇場となる「日進・日露戦争の艦艇」も紹介されています。個人的にはこの辺がいちばん面白いんだけれど、前面に出した紹介がなかなか出来ないのはいささか口惜しいことであります(w


ディティールアップパーツに関してはインジェクションのものを大きめのランナー画像で紹介しています。この分野も進捗著しく、かつ外箱からではパーツ内容を窺い知るのが難しいアイテムなのでこの配慮はやはり作り手の視点を考えてのことでしょう。


全体を通じて幅広く且つ堅実で確かな記述内容となっています。最近何かと話題の艦これこと「艦艇これくしょん」や「蒼き鋼のアルペジオ」などで艦艇模型に興味を持ち、これから始めようという方には是が非にでもお薦めの一冊。


あ、一冊じゃないのか、続巻となる「日本海軍 航空母艦 重巡洋艦 駆逐艦 潜水艦」編は8月に発売予定。外国艦や現用艦艇にも期待したいところですね。


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