TAKOM「1/35 WWI フランス サンシャモン 前期型」

今年は第一次大戦百周年で……って枕詞は何度言いましたかしら、新進気鋭の大陸系メーカーのひとつTAKOMから第一次世界大戦にフランス軍が投入した突撃戦車サンシャモン、世界初のインジェクションキットです。

Aランナーは二枚入り、当ブログでTAKOM製品取り上げるのはこれが初めてになりますね。


可動式キャタピラのBランナーも2枚入ってます。TAKOMの1/35スケール戦車模型としては2番目に当たる製品で、前作オブイェークト279とはまったく傾向が異なるアイテムだけに大きな話題となりました。


3社競作となった279に比べてこのサンシャモンはTAKOMだけのリリースとなります。こういう製品の方が何かと安心します。


本車は第一次世界大戦に投入された戦車のなかでもマイナーな部類に入るものでしょうか?日本語で書かれた資料として思いつくのはアーマーモデリングに連載されてるモリナガ・ヨウ先生の「私家版戦車入門」ぐらいなんですが、あれ単行本になってないんですよねえ(AMの号数でいうと2012年の150号前後でサンシャモン戦車が取り上げられていたはずです)


戦車という存在のありかたが未だ確立されざる時代の車両なので、自分の中にある「戦車模型の諸要素」とまるで一致しないパーツばかり。そこがまた、面白いところでもあるのですが。


車体上部は一体成型、側面のディティールにも抜かりはありません。あらためて見るとこの形って……まあいいか。


デカールは二両分、“CHANTECOQ”号と“FANTOMAS”号が付属します。後者は確かユーレイで、前者はどんなニワトリのことかしらと「にわとり フランス語」で検索したらフランス料理の話ばっかりヒットするよ!(「歌うニワトリ」という意味らしいです。なんて詩的)


エッチング無しですべてプラパーツによる立体化、全体にわたってリベットだらけの車体をシャープな出来栄えで仕上げています。パネルラインのモールドなども実に綺麗、なんですが……


アンダーゲートならぬ「オーバーゲート」なパーツがあるのは、うっかりなんだか意図的なものなんだか量りかねます(^_^;)


足回りには以前MENGのキットを組んだルノーFTと似通うところもありまして、なるほど同時代の機械なんだなと思わされる。


中華系の戦車模型メーカーとしては極めて珍しいことにTAKOMのキットはフィギュアが付属します。オブイェークト279の時はNBC防護スーツのフィギュアが大きな話題となりましたが、今回の「アイアンマスクマン」もインジェクション化は世界初の快挙じゃないでしょうか。次回作レオパルドC2もアフガニスタン民兵(?)が付属するそうで、是非TAKOMにはこのフォーマットを続けてほしいものですね。作る側も楽しいですしメーカーとしても経験値がたまることでありましょう。


しかし「戦車らしいパーツ」を探すのに苦労する戦車模型ですねこれ(笑)いちおう本製品は「初期型」を立体化していてソミュール軍事博物館に唯一現存する「後期型」とは異なる箇所が散見されますが、前期後期と明確に分類され得るほど規格化されていたかどうかは不明である。


初期型の大きな特徴としては車体前後に円筒形のキューポラを有することが上げられます。キットではハッチ部分が別パーツ化されているので開放状態やフィギュアを乗せることも出来そうですが、残念ながら内部のインテリアは一切存在しませんのんで念のため。



ちょっとユーモラスな外観が面白いけど、なかなか戦車作ってる気分やノリになれないのはメンタル的に問題かも知れません(w


前部中央の小型キューポラのみ選択式。照準器にしちゃえらくゴーカイな開口部分だなーと思ったらどうやらここはサーチライトが収納されていたようですね。ライトそのもののパーツは付属しませんが……


ポルシェ博士に先駆けてガス=エレクトリックのハイブリッド駆動を実装していたのはよく知られる本車の特徴です。車体に占める駆動部分のコンパートメントはかなりの割合のようで、巨大なフードが目に止まります。


「フレンチ75ミリ」として世界的にも著名な75ミリ野戦砲を主砲に備えます。第一次世界大戦の戦車としては屈指の高火力、でも大したアドバンテージにはならなかったようで。


主砲は上下動のみですが上下左右に可動するオチキス機関銃が車体正面と左右、


そして後部に存在します。排気管先端はドリルやカッターでコリコリしましたがそんなことよりパーティングラインにも気を配りましょう(恥)


機関銃は機関部分までちゃんと再現されてます。可動させるのが面白くてさっさと全部組み付けてしまい、機関銃パーツA31を個別に撮影するのをすっかり忘れていたのである……


完成した車体上部。側面のドアといい前面の主砲といい、のちのB1重戦車に続くレイアウトが確立されているのを感じます。天井部分の6個のハッチは乗り込みには使えたんだろうか?


なんだかんだいって車体上部の組み立てはスムーズに進んで楽しいものでした。むしろここからが本番でした。


履帯長よりも前後に大きく張り出した車体下部には段差を乗り越えるためのローラー(「コロ」といったほうが正しいのかな)が装備されます。


他に類を見ない本車独自のチャームポイントでってなぜなら全然役に立たないので誰もこの配置を真似しなかったというのが真相であろうなあ。なんか酒樽みたいな形してますけれど、材質はなんだったんでショ?


サスペンション基部などに露骨に「鉄骨」が見えているのも特徴的で、設計作業も突貫でやったんでしょうなあ。なんだか魚の骨みたいでもある。ホッケ食べたい(突然)


冊子形式の取説はひとつひとつの製作過程を丁寧に図示していて見やすいものです。ただシャーシー関連のパーツイラスト、前後や裏表の位置関係が目まぐるしく変化するのでその点はご注意ください。


それぞれのパーツは成型も良好で取り付け位置も明確なのですがなにしろ数が多い。数が多いパーツを後々で連結するような手順で進められていく過程はともかく、ひとつの作業工手をいい加減に済ますとあとでとんでもないことになるなーと、それは薄々気がついていたのですが……


途中からとんだチカラワザになるのは製品よりは組んだヤツの問題でしょう。工程18でA9やA23を取り付ける際にはE2とE3をいわば治具的な使い方で取り付け位置や角度を一定化するべきでした。ここに限らず本製品はどうやらパーツごとの取り付けに「遊び」がまったく取られていないようなので、皆様におかれましては仮組みを慎重に行われますよう申し添えておきます。


サスペンションの組み立てはひとつのフレームに6枚のパネルを取り付けることからスタートします。このあたりももー少し一体化されていれば組み立てやすいのになあ。もっともこの戦車の「構造」や「機構」を知るにはよい案配の分割で、設計陣はそちらを優先したのかな? それもまた重要なことではあるのでしょうね。


16個ある下部転輪を板状のパーツではさんでプレートに取り付けるのですが、細いフレームで支えられるプレートはどうにも安定しない。そこで一計を案じてまず一枚「壁」をがっちり接着し、


もう一方の側に転輪を仮止めしてささっと組んでしまいまショーと、結論から言うとこれが大失敗でしたOTL


どうもね、板パーツの取り付けとなる凸部分とプレート側の受けが浅すぎる設計に加えて転輪の軸となるA14がちょっと長いみたいなのよね。全然うまくいかねーのよこれが(泣)


かなーり無理矢理形にはしましたが、皆様におかれましては面倒臭がらずにひとつひとつの過程を慎重に作業することをお薦めします。まず転輪を16個組み立ててそこでひと晩寝ちゃうと取り返しのつかないことになるぞ!


たぶんこれ全体でひとつのボギーを構成するんだろうなあ。システムとしてはすべての戦車の原点ともなるホルトトラクターのそれをほぼ踏襲していたサスペンションだそうですが、なんだか鉄道車両作ってるキブン(笑)


サスペンションの取り付け工程もいろんなしわ寄せがうわっと一気に襲ってくるような感じである。このあたりの工程ではA13パーツが異様に折れやすいので結局「なんとなくそれっぽい位置に付いてる」だけになってしまってorz


手順ではシャーシー下部にフェンダーを取り付けたあとでキャタピラを通すよう指示されていますが、どう考えてもその順番は理不尽に思えたので先にキャタピラ組みます。キャタピラそのものの組み立ては手順通りにまずB1とB3を接着してスタート地点を作り、そこから先B2→B3→B1の順番で伸ばしていきます。デザインやサイズははともかく構造はルノーFTと同様の履体、個々のブロックが一体化されはめ込み式だったMENGのルノーよりは多少の手間が掛かりますが、それほど大変なわけでもなく。


あっという間にかたちになります。RPMルノーFTを購入した方が箱を空けた瞬間ショックで次々に命を落とされていた(比喩的表現)時代と比べるとなんという天国か。


なぜかBランナーには外枠にリベットが用意されていました。作業中にどこかを削ってしまうような事故も別に発生はしませんでしたが、あれば安心できるものでしょうね。


そのキャタピラを巻きつけて、


あとからフェンダーを被せる。ここはこの方が確実にやり易いと断言できます。そしてなにかと精神的にへこんだ車体下部を上部と合わせりゃようやく……と思ったら、なぜか全然合わないのよ上下が。

いくらやっても。そりゃ


工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工

って顔になるじゃない?したらね


前後を間違えてただけでしたよヽ(゚∀。)ノ アヒャヒャ 

前後や裏表を何度もひっくり返しているうちに、いつのまにか脳内でシャーシーの前後関係がすっかり入れ替わっていたのである、コワイ!


であるからして、そのまま撮影を続けていた今回記事のいくつかの画像は、前からの構図で撮ろうと思って後ろ側からシャッターを切ってたりするんだなこれが。



楽をしようと思って却って無駄に苦労したような過程を乗り越えなんとか完成。第一次世界大戦の戦車って漠然と思い描くよりずっと巨大で、前後左右に突き出した火器類から受ける印象の強さは相当なものです。いささか派手目なフランス軍の迷彩塗装でこいつが迫ってきたら「まるで鋼鉄の毛虫だ」という話も無辺なるかな。


とはいえこの前後に伸びた車体デザインでは戦車にまず要求された塹壕超越能力に問題を生じることが傍目にも明らかでしょう。サン・シャモン突撃戦車は初期発注分377両をもって生産を中止し、よりコンパクトにまとめられたルノーFTに主力の座を譲りました。本車は砲兵科が主体となって開発が成され、強力な75ミリ野戦砲を搭載するために前後長を大きく取った設計が結果的には仇となったと言えましょうか。

現在第一次大戦時期のフランス軍戦車ってシュナイダーCA1以外はすべて1/35インジェクションキットで入手できるのか。いやはやすごい時代だ……


「アイアンマスクマン」の名の通り、防護用のチェーンマスクを装備した戦車兵フィギュア。左手に持っているのは地図か作戦命令かとにかく何かの書類のようで、キューポラから半身を乗り出し信号旗を振るような姿勢にも見えます。ひとつぐらいはキューポラハッチを接着せずに置いておけばよかったな。


マスクというか面頬(メンポ)に近いか。オブイェークト279のNBC防護服を着たソ連兵につづく「かぶりもの」フィギュアは普通に表情を作るよりこのほうが楽だったからかなあ。レオC2に付属するフィギュアは顔の造作もちゃんとしてると思いますけど。


戦車模型としてはかなりの変化球に思われますが、実にするどい球筋であるのも確かです。次回作レオパルドC2ではどんな球になるのか、ようやく直球を投げてきそうですが、そうそう油断は出来ないかも知れませんね。


そんで箱空けた瞬間から組み立て終えたいままでずっと付いて離れない気持ちがひとつ。この戦車ってその、すごくデカイ

棺桶

に見えるんですがそこはいいのかフランス人。

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