バンダイ「1/350 ゴジラ (モスゴジ)」

バンダイ「The特撮collection」シリーズNo.3、「モスラゴジラ」版ゴジラのインジェクションキットです。最近あんまり「怪獣王」って言わなくなりましたね。

「The特撮collection」はバンダイが1980年代初頭に展開していた特撮怪獣/ヒーローのプラモデルシリーズです(本キットは1983年初回発売)。
この当時は怪獣の立体化が結構なブームで、今でこそ思いもよりませんがガレージキットと言えば怪獣が代名詞でした。海洋堂のGSV(ゴジラスーツバリエーション)の紹介記事がコミックボンボンに掲載されてた、冷静に考えるとトンデモない時代であります…


ほぼ同時期にポピー(バンダイと合併する前後の時期ですかね)からは「リアルホビー」なる大型ソフビキットの特撮怪獣シリーズが色々発売されてました。今でもネットのオークションなどに出物があったりするようですが、大手メーカーによるガレージキット的な製品のアプローチとして後のB-Clubブランドの先駆けみたいなもの、でしょうか?「The特撮collection」とリアルホビーには直接の関連はないのかも知れませんが、どちらも「リアル」という80年代初頭のキャラクターモデルに於ける重要なキーワードを基軸に開発された製品です。


ゴジラのプラモデル」はマルサン・ブルマァクの昔から存在するものですが、実際に東宝映画で使用されたスーツと同様の、ガレージキットのように「リアル」なゴジラのプラモデルはこの1/350スケールのモスゴジが初めての物でしょう。


思わず笑っちゃうようなデカールだって当時の「リアル」の一環です。ガンプラで言うと「リアルタイプ」や「MSV」とほぼ同時期のシリーズなのです。


ですから組み立て説明書のデザインもMSVと同様黒を基調にしたシックな物、資料的価値のある読ませる内容となっています。対象年齢をちょっと高めて大人のいや「大人びた」雰囲気のフォーマットです。


生物感を表現した体躯のモールドは金型技術的には進捗があったのかな?この「The特撮collection」もあまり顧みられることがないシリーズですけど、開発当時の背景とか内部事情とか、ちょっと興味はあります。なぜバルタン星人は二代目の方を立体化したのか…とか。


何かオマケがついてくるのがこのシリーズの楽しいところで本キットにはモスラ幼虫が付属。さすがに双子ではありませんがモナカの2パーツに触角(?)2本の合計4パーツながら、なかなか雰囲気出ています。たしかペギラにはF-86ガメラにはF-104のそれぞれ小さな戦闘機が付属してて面白かったな…


残念ながらパーツの合いはあまりよろしくないです。いま現在の目で見ちゃうのはともかく、発売当時も合わせ目を消した上で周囲のモールドと同様のディティールを入れてく過程を避けて手を出さない人もいたんじゃなかろうか。てゆーか自分がそれですハイ。
そんなわけでこのシリーズ、個人的にはメカゴジラがオススメ(笑)


モールド確認のためサーフェーサーまで吹いてみました。さてぶっちゃけるとこのシリーズピンキリが激しくてこのモスゴジはどっちかっつーとキリのほうだったりします。ほうも何もひょっとするとあーゴニョゴニョ。この時期のバンダイプラモでたま〜にある、「売れ線の主人公に限って出来がよくない」典型的な例かも知れません。「完成見本の写真がよくない」典型的な例にも感じたので少し腕を下げ目にしてみましたら多少なりとも安定感。ガンプラで言うと初期のMGがやたらと「怒り肩」を過剰に見せていたようなものかな。


ほぼ直立のポーズも固いしプロポーションも頭でっかち、当時の模型雑誌でもあんまりよい評価はされていません(いやはや、現在とは隔世の感が)。キット開発当時には撮影に使われたスーツは既に廃棄されたかあるいは取材に耐えられない状況だという事情を差し引いても、やっぱりなんかヘンなんだよな、これ。ゴジラ以外の何物にも見えないけれど、「モスゴジ」ではないだろーと…


顔だけ見るともう少し後の時代、「正義のみかた」になってた頃のゴジラシリーズを彷彿とさせます。開田裕治画伯の素晴らしいボックスアートや解説書の資料写真が却って足を引っ張る結果になってる…ような。


体表のモールドにもいまひとつ物足りなさを感じます。当時の技術の限界よりは設計センスの方の問題じゃないかと思うのはシリーズ後発の「1/250初代ゴジラ」がシリーズ最高傑作の出来栄えで、その原型を製作したのが速水仁司であるという、そんな事情もあったりで。


若干なりとも尻尾に躍動感があるのは本キットいちばんの見どころかも知れません。ゴジラの命は装演で巧みに動かされる尻尾だとか言われますし「プラコン大作」で日本舞踊のお姉さんとゴジラ対決やったとき(なんて古い話だ)も、尻尾の造型が重視されていた記憶が…いや、マンガで使ってたのも確か1/250初代ゴジラの方だったよーな……あれ、プラコン大作ってそもそもバンダイプラモ使ってたっけ??


…えー、この話はここまでにしましょう。


モスラモスラは素晴らしい出来です!ピンと振り上げたヒップラインもセクシーで、やっぱり怪獣の造型にはエロチシズムが不可欠なのです!!


さすがに初回発売より四半世紀が過ぎ去りましたしこの先「怪獣」がインジェクションプラモデルでリリースされることもまずなかろうと思いますので、これはこれで当時の姿をありのままに楽しむのが良いんだろうなと思もわれます。旧オーロラ社のゴジラシリーズと同じようなポジション、どこか素朴なノスタルジアを感じさせる製品、民芸品のような…




北海道みやげの木彫りの熊みたいな位置づけ。

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